2026年度(令和8年度)調剤報酬改定で、新たに「訪問薬剤管理医師同時指導料」が新設されました。
在宅医療では、これまでも医師と薬剤師がそれぞれ患者宅を訪問していましたが、一部の在宅医療に積極的な薬局では、以前から医師の訪問診療に薬剤師が同行し、その場で処方提案や服薬状況の確認を行う取り組みが行われていました。
今回の改定では、そのような先進的な取り組みが「患者にとって有益である」と評価され、新たな診療報酬として制度化されたのです。
この記事では、新設の背景から算定要件、実務での活用方法、併算定できる加算まで詳しく解説します。
訪問薬剤管理医師同時指導料とは?
訪問薬剤管理医師同時指導料は、訪問診療を行う医師と薬局薬剤師が同時に患者宅を訪問し、共同で薬学的管理・指導を行った場合に算定できる点数です。
訪問薬剤管理医師同時指導料 (6か月に1回) 150点
対象患者
次のいずれかを算定している患者が対象です。
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- 居宅療養管理指導費
- 介護予防居宅療養管理指導費
※いずれも単一建物居住者1人が対象となります。
[調剤報酬点数表に関する事項]原文
(1) 訪問薬剤管理医師同時指導料は、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものに対し、当該患者又はその家族等の同意を得て、当該患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導又は居宅療養管理指導を実施している保険薬剤師が、訪問診療を実施している保険医療機関の保険医と同時に患家を訪問し、薬学的管理指導を行った場合に、6月に1回に限り算定する。
(2) 算定対象となる患者は、以下のいずれかに該当するものとする。
ア 在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者(単一建物診療患者が1人の場合に限る。)
イ 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定している患者(単一建物診療患者が1人の場合に限る。)
ウ 居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合に限り、単一建物居住者が1人の場合に限る。)を算定している患者
エ 介護予防居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が行う場合に限り、単一建物居住者が1人の場合に限る。)を算定している患者
(3) 同時に訪問を行う「訪問診療を実施している保険医療機関の保険医」は、所属する保険医療機関において在宅時医学総合管理料を算定し、当該患家の患者の主治医であることとする。
(4) 在宅患者緊急時等共同指導料又は在宅移行初期管理料に係る必要な指導等を同日に行った場合は、算定できない。
(5) 訪問薬剤管理医師同時指導料は、特別調剤基本料Bを算定している保険薬局は算定できない。
実施上の留意事項
注1 区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料の1を算定している患者その他厚生労働大臣が定める患者に対し、当該患者又はその家族等の同意を得て、当該患者に対して訪問薬剤管理指導を実施している保険薬剤師が、訪問診療を実施している保険医療機関の保険医と同時に訪問を行うとともに、必要な指導等を行った場合に、6月に1回に限り算定する。
2 区分番号15の3に掲げる在宅患者緊急時等共同指導料又は区分番号15の8に掲げる在宅移行初期管理料に係る必要な指導等を同日に行った場合は、算定しない。
3 訪問薬剤管理医師同時指導に要した交通費は、患家の負担とする。
なぜ新設されたの?
今回の改定は、「同行したから評価する」という制度ではありません。
本来の目的は薬剤師が診察の場で専門性を発揮し、処方をより適切なものへ改善することにあります。
一部の薬局では以前から実践されていた
在宅医療に力を入れている薬局では、以前から医師の訪問診療へ同行し、
- 残薬確認
- 飲み忘れの確認
- 副作用の確認
- 患者・家族からの聞き取り
- 医師への処方提案
を診察中に実施していました。
その結果、
- ポリファーマシー改善
- 残薬削減
- 医師の負担軽減
- 副作用予防
- 減薬
などにつながることが明らかとなり、この取り組みが診療報酬として評価されることになりました。
厚生労働省が期待していること
中医協資料では、同行訪問によって次のような効果が示されています。
医師の負担軽減
在宅医が最も負担に感じている業務の一つが服薬状況や残薬の確認です。
調査では、約87%の医師が薬剤師による残薬確認を期待しているという結果が示されています。
中央社会保険医療協議会(中医協)総会資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001594226.pdf
処方提案が増える
薬剤師が同行すると、
- 剤形変更
- 用法変更
- 腎機能に応じた減量
- 重複投与の解消
- 副作用対策
など、患者の状況に応じた提案が増えることも報告されています。
減薬につながる
薬剤師が診察時に介入することで、不要薬の中止や減薬につながる割合が高くなることも評価されています。
算定要件
算定には次の要件を満たす必要があります。
- 在宅療養中で通院困難であること
- 患者または家族の同意を得ていること
- 主治医と薬局薬剤師が同時訪問すること
- 薬学的管理・指導を実施すること
- 同一患者につき6か月に1回まで
また、同時訪問を行う医師は、在宅時医学総合管理料を算定している主治医である必要があります。
施設入居者は対象外
「単一建物居住者1人」であれば施設患者も対象になると思われがちですが、施設入居者は対象外です。
その理由は、医科側の算定要件にあります。
この点数は、在宅時医学総合管理料を算定している患者が対象です。
一方で、施設入居者では医師は施設入居時等医学総合管理料を算定するため、対象外となります。
なお、施設で「単一建物居住者1人」となるケースについては制度が複雑なため、別記事で詳しく解説しています。
同時訪問で重要なのは「処方提案」
この点数は150点を算定することが目的ではありません。
重要なのは、その場で処方提案を行い、薬物療法をより良いものへ改善することです。
例えば、
- 残薬が多い
- 飲めていない
- 眠気が強い
- 血圧が低い
- 腎機能が低下している
このような情報を診察中に共有することで、
- 減薬
- 剤形変更
- 用法変更
- 一包化
などをその場で検討できます。
さらに、この処方提案によって次のような薬学管理料の算定につながるケースもあります。
| 算定につながる可能性がある項目 | 内容 |
|---|---|
| 服用薬剤調整支援料1 | 複数薬剤の減薬につながった場合 |
| 服用薬剤調整支援料2 | 継続的な減薬支援を行った場合 |
| 薬学的有害事象等防止加算 | 副作用・相互作用を回避した場合 |
| 調剤時残薬調整加算 | 残薬調整により処方日数を適正化した場合 |
つまり、訪問薬剤管理医師同時指導料は薬剤師の専門性を発揮する「入口」の評価であり、その後の継続的な薬学的介入へつなげることが重要です。
併算定できる加算
| 項目 | 併算定 |
|---|---|
| 調剤時残薬調整加算 | ○ |
| 薬学的有害事象等防止加算 | ○ |
| 麻薬管理指導加算 | ○ |
| 乳幼児加算 | ○ |
| 小児特定加算 | ○ |
| 中心静脈栄養法加算 | ○ |
| 医療用麻薬持続注射療法加算 | ○ |
| 外来服薬支援料1 | × |
| 外来服薬支援料2 | ○ |
| 服用薬剤調整支援料1 | ○ |
| 服用薬剤調整支援料2 | ○ |
| 経管投薬支援料 | ○ |
| 在宅移行初期管理料 | × |
| 複数名薬剤管理指導訪問料 | × |
実務で活用するポイント
おすすめなのは、次のような患者で医師へ同行を提案することです。
- 退院直後
- ポリファーマシー
- 残薬が多い
- 副作用が疑われる
- 飲み忘れがある
- 処方変更を検討している患者
訪問前に
- 残薬
- 副作用
- バイタル
- 飲み忘れ
- 家族からの相談内容
を整理しておけば、診察中にスムーズな処方提案ができます。
在宅移行初期管理料と訪問薬剤管理医師同時指導料、どちらを算定すべき?
Q. 在宅導入時に医師の初回訪問診療へ同行し、残薬整理や服薬状況の確認を行いました。在宅移行初期管理料と訪問薬剤管理医師同時指導料のどちらを算定すればよいのでしょうか?
A. このようなケースでは、在宅移行初期管理料の算定をおすすめします。
訪問薬剤管理医師同時指導料は、在宅移行初期管理料を算定した日には算定できません。
初回の訪問診療では、退院直後や在宅療養開始直後であることも多く、
- 残薬の整理
- 持参薬の確認
- お薬カレンダーなど服薬環境の整備
- 一包化の検討
- 家族への服薬指導
など、在宅移行初期管理料の対象となる支援を実施するケースが多くあります。
このような場合は、点数が高く、在宅導入時にしか算定できない在宅移行初期管理料を優先するのが効率的です。
その後、患者の状態変化や処方見直しが必要となったタイミングで再度医師の訪問診療に同行すれば、訪問薬剤管理医師同時指導料を算定することができます。
在宅移行初期管理料については以下の記事にまとめてあります。
おすすめの算定イメージ
| タイミング | 算定のおすすめ |
|---|---|
| 初回訪問(在宅導入時) | 在宅移行初期管理料 |
| 2回目以降に医師と同行訪問 | 訪問薬剤管理医師同時指導料 |
このように、それぞれの点数の役割を理解して計画的に活用することで、患者にとっても薬局にとってもメリットの大きい在宅薬学管理を実践できます。
まとめ
訪問薬剤管理医師同時指導料は、「医師と一緒に訪問したこと」を評価した点数ではありません。
薬剤師が診察の場で専門性を発揮し、医師とリアルタイムで情報共有しながら薬物療法を最適化することを評価した制度です。
150点という点数だけを見るのではなく、その場で処方提案を行い、減薬や副作用予防、残薬解消につなげ、さらには服用薬剤調整支援料や薬学的有害事象等防止加算などの薬学管理へ発展させることが、この制度を最大限活用するポイントといえるでしょう。
これからの在宅医療では、「薬を届ける薬剤師」ではなく、「診察の場で薬物療法を最適化する薬剤師」の役割が、ますます求められていきます。
これからも、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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参考資料・出典
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要(在宅医療・調剤関連)」
- 厚生労働省「令和8年度調剤報酬点数表」
- 中央社会保険医療協議会(中医協)総会資料

