在宅医療では、普段は計画的な訪問薬剤管理指導を行っていますが、患者さんの状態は時に大きく変化します。
例えば、
- 痛みが急激に悪化した
- PCAポンプを導入することになった
- 経口薬から持続皮下注射へ変更になった
- 在宅看取りが現実的になった
このような場面では、医師・看護師・薬剤師など多職種が集まり、治療方針を共有する「カンファレンス」が開催されます。
その際に薬剤師も参加し、共同で療養上必要な指導を行った場合に算定できるのが在宅患者緊急時等共同指導料です。
今回の記事では在宅患者緊急時等共同指導料について解説します。
在宅患者緊急時等共同指導料とは?
在宅患者緊急時等共同指導料(700点)は、
在宅療養中の患者さんの病状急変や診療方針の大きな変更があった際に、多職種でカンファレンスを実施し、その内容を踏まえて薬剤師が薬学的管理・指導を行ったことを評価する点数です。
ポイントは、
「緊急訪問を評価する点数」ではなく、多職種連携そのものを評価する点数であるということです。
ここがポイント!
- 月2回まで算定可能
- 医師の求めによる共同指導が必要
- 他職種1名以上とのカンファレンスで算定可能(医師や看護師が必須とはされていません)
- カンファレンス後は速やかに患家を訪問し薬学的管理指導を行う
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の上限とは別枠
- 麻薬管理加算、在宅中心静脈栄養法加算、医療用麻薬持続注射療法加算は算定可能
- 夜間・休日・深夜訪問加算は算定できない
算定できる条件
次のすべてを満たす必要があります。
① 在宅患者であること
訪問薬剤管理指導を実施している、通院困難な在宅療養患者が対象です。
② 病状の急変や診療方針の変更
例えば
- 疼痛増悪
- 呼吸苦の悪化
- PCAポンプ導入
- オピオイド変更
- 経口投与から持続皮下注射への変更
- TPN導入
など、治療方針が大きく変わるタイミングが対象になります。
③ 医師の求めがあること
薬剤師が自主的に参加しただけでは算定できません。
在宅療養を担当する保険医、または連携する保険医から依頼があることが条件です。
④ 多職種でカンファレンスを行うこと
共同で参加する職種は、
- 医師
- 歯科医師
- 訪問看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- ケアマネジャー
- 介護福祉士
- 相談支援専門員
など。通知では「関係する医療関係職種等」とされており、他職種が1名以上参加していれば算定可能です。
「医師+看護師が必須」というわけではありません。
カンファレンスの日と訪問日は別でもOK
意外と知られていませんが、カンファレンス当日に訪問できなくても、カンファレンス後、速やかに薬学的管理指導を行えば算定できます。
ただし、カンファレンス1回につき算定は1回のみとなります。
オンライン参加も可能
薬剤師は、ビデオ通話でカンファレンスへ参加することも可能です。
ただし、
- 少なくとも1名の医療職は患者宅にいる
- 個人情報の共有について患者の同意がある
- 医療情報システムの安全管理ガイドラインを満たす
などの条件があります。なお、オンラインで薬学的管理指導を行った場合は、この点数は算定できません。
つまり、カンファレンスにはオンラインで参加しても良いが、訪問指導は患者宅で行う必要があります。
加算について
在宅患者緊急時等共同指導料は、共同指導そのものを評価する点数ですが、状況に応じて算定できる加算があります。一方で、併算定できない加算もあるため注意が必要です。
算定可能な加算
以下の加算は、要件を満たせば在宅患者緊急時等共同指導料と併せて算定可能です。
算定できない加算
一方で、次の加算は在宅患者緊急時等共同指導料には算定できません。
これらは在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料に対する加算であり、在宅患者緊急時等共同指導料には適用されません。混同しやすいポイントなので注意しましょう。
実務のポイント
終末期では、
- 緊急訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急時等共同指導料
- 麻薬管理指導加算
- 在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算
を組み合わせて算定する場面が少なくありません。一方で、夜間・休日・深夜の時間帯に共同指導を実施したとしても、夜間訪問加算・休日訪問加算・深夜訪問加算は算定できないため、レセプト作成時は加算の対象となる基本点数を確認することが重要です。
緊急訪問薬剤管理指導料との違い
混同されやすい点数ですが、大きな違いがあります。
| 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 | 在宅患者緊急時等共同指導料 |
|---|---|
| 薬剤師単独の緊急訪問を評価 | 多職種での共同カンファレンスを評価 |
| 緊急訪問が中心 | カンファレンス+共同指導が中心 |
| 月4回まで (がん終末期、麻薬注射は月8回) | 月2回まで |
終末期では両方を組み合わせるケースも少なくありません。在宅患者緊急訪問薬剤管理指導については以下の記事を参考にしてください。
前述しましたが、注意点としては在宅患者緊急時等共同指導料では夜間・休日・深夜訪問加算は算定できません。したがってこれらのような時間外に対応する場合には在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定したほうが点数が高くなることもあります。
終末期では特に活躍する点数
私自身も、この点数を算定するケースの多くは終末期です。
例えば、
「痛みが増強し、医師・訪問看護師・薬剤師でカンファレンスを実施」
↓
「経口オピオイドからPCAポンプへ変更」
↓
「薬剤師がポンプの管理方法や麻薬の説明を行う」
このような流れは、実際の在宅医療ではよく経験します。
記録しておきたい内容
算定には薬歴への記録も重要です。
最低限、次の内容を残しておきましょう。
- カンファレンス実施日
- 薬学的管理指導実施日
- 参加職種・参加者氏名
- カンファレンスの要点
- 指導を実施した理由
- 実施した薬学的管理の内容
- 医師へ情報提供した内容
厚生局の個別指導でも確認されやすいポイントです。
まとめ
在宅患者緊急時等共同指導料は、決して頻繁に算定する点数ではありません。しかし、患者さんの病状が大きく変化する場面で、多職種が一丸となって支える在宅医療の本質を評価した点数と言えます。
特に終末期では、PCAポンプの導入やオピオイドの切り替えなど、多職種による迅速な意思決定が必要となる場面が数多くあります。そのようなタイミングで薬剤師がチームの一員としてカンファレンスに参加し、専門性を発揮することは、患者さんやご家族の安心につながるだけでなく、薬剤師の価値を示す重要な機会でもあります。
「緊急だから薬を届ける」だけで終わるのではなく、治療方針をともに考え、共有し、その内容を薬学的管理に反映する。これこそが、この点数が評価している薬剤師の役割なのではないでしょうか。
これからも、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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