在宅の知識

【薬局の在宅訪問】注射剤の院外処方可否について解説

薬局薬剤師の方は注射剤に苦手意識を持っている方は少なくないのではないでしょうか?

在宅医療では外来に比べて注射剤を扱うケースが多くなります。

タイガー薬剤師
タイガー薬剤師
終末期の患者さんでは特に多いです!

しかしながら、院外可能な注射薬は厚生労働大臣が定めるものに限定されています。

医師も知らずに院外処方するケースもあるため、知らずに請求していて返戻になることもあります。

そのようなことを回避するために、注射剤の処方が出た場合に処方可能なものか確認するようにしましょう。

また、退院を支援するような病院関係者にも知っておいてもらいたいです。

院外処方可能な注射薬のリスト

一 療担規則第二十条第二号ト及び療担基準第二十条第三号トの厚生労働大臣が定める保険医が投与することができる注射薬

インスリン製剤、ヒト成長ホルモン剤、遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤、乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤、活性化プロトロンビン複合体、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体、性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤、性腺刺激ホルモン製剤、ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体、ソマトスタチンアナログ、顆粒球コロニー形成刺激因子製剤、自己連続携行式腹膜灌流用灌流液、在宅中心静脈栄養法用輸液、インターフェロンアルファ製剤、インターフェロンベータ製剤、ブプレノルフィン製剤、抗悪性腫瘍剤、グルカゴン製剤、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、ヒトソマトメジンC製剤、人工腎臓用透析液(在宅血液透析を行っている患者(以下「在宅血液透析患者」という。)に対して使用する場合に限る。)、血液凝固阻止剤(在宅血液透析患者に対して使用する場合に限る。)、生理食塩水(在宅血液透析患者に対して使用する場合及び本号に掲げる注射薬を投与するに当たりその溶解又は希釈に用いる場合に限る。)、プロスタグランジンI2製剤、モルヒネ塩酸塩製剤、エタネルセプト製剤、注射用水(本号に掲げる注射薬を投与するに当たりその溶解又は希釈に用いる場合に限る。)、ペグビソマント製剤、スマトリプタン製剤、フェンタニルクエン酸塩製剤、複方オキシコドン製剤、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤、デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム製剤、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断剤、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム製剤、トラネキサム酸製剤、フルルビプロフェンアキセチル製剤、メトクロプラミド製剤、プロクロルペラジン製剤、ブチルスコポラミン臭化物製剤、グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤、アダリムマブ製剤、エリスロポエチン(在宅血液透析又は在宅腹膜灌流を行っている患者のうち腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)、ダルベポエチン(在宅血液透析又は在宅腹膜灌流を行っている患者のうち腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)、テリパラチド製剤、アドレナリン製剤、ヘパリンカルシウム製剤、オキシコドン塩酸塩製剤、アポモルヒネ塩酸塩製剤、セルトリズマブペゴル製剤、トシリズマブ製剤、メトレレプチン製剤、アバタセプト製剤、pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤、電解質製剤、注射用抗菌薬、エダラボン製剤(筋萎縮性側索硬化症患者に対して使用する場合に限る。)、アスホターゼ アルファ製剤、グラチラマー酢酸塩製剤、脂肪乳剤、セクキヌマブ製剤、エボロクマブ製剤、ブロダルマブ製剤、アリロクマブ製剤、ベリムマブ製剤、イキセキズマブ製剤、ゴリムマブ製剤、エミシズマブ製剤、イカチバント製剤及びサリルマブ製剤、デュピルマブ製剤、ヒドロモルフォン塩酸塩製剤、インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤、遺伝子組換えヒトvon Willebrand因子製剤、ブロスマブ製剤、アガルシダーゼ アルファ製剤、アガルシダーゼベータ製剤、 アルグルコシダーゼ アルファ製剤、イデュルスルファーゼ製剤、イミグルセラーゼ製剤、エロスルファーゼ アルファ製剤、ガルスルファーゼ製剤、セベリパーゼ アルファ製剤、ベラグルセラーゼアルファ製剤、ラロニダーゼ製剤、メポリズマブ製剤、オマリズマブ製剤(季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く。)、テデュグルチド製剤、サトラリズマブ製剤、ビルトラルセン製剤、レムデシビル製剤、ガルカネズマブ製剤、オファツムマブ製剤、ボソリチド製剤、エレヌマブ製剤、アバロパラチド酢酸塩製剤、カプラシズマブ製剤、乾燥人C1-インアクチベーター製剤、フレマネズマブ製剤及びメトトレキサート製剤、テゼペルマブ製剤、オゾラリズマブ製剤、ドブタミン塩酸塩製剤、ドパミン塩酸塩製剤及びノルアドレナリン製剤

二 (略)

覚えきれませんよね(笑)

始めて聞くようなものは調べていくようにしましょう。

ただし、これらはあくまで【院外処方可能な注射剤】であって、記載されていない注射剤が在宅で使えないわけではありません。

医療機関で払い出してもらう場合、全ての注射剤は理論上使用可能です。

院外処方可能な薬品

全て記載すると膨大な量になってしまうので、外来ではあまり出る機会が少なく、在宅で使われやすいものについて解説します。

抗悪性腫瘍剤

使用されることが多いわけではありませんが、抗悪性腫瘍薬は全て院外処方可能です。

在宅での化学療法を行うケースは極めて珍しいですが、今後広まっていくことも期待されています。

その際には全て院外処方可能であることを把握しておくことは大事になってきますね。

医療用麻薬

医療用麻薬としてモルヒネ塩酸塩製剤、フェンタニルクエン酸塩製剤、複方オキシコドン製剤、オキシコドン塩酸塩製剤、ヒドロモルフォン塩酸塩製剤が記載されています。

一般的に用いられる医療用麻薬の注射剤は全て使用可能です。

ヒドロモルフォンも注射剤が発売されてから速やかに追加されました。

複方オキシコドン製剤 (パビナール) はあまり使われていませんが、院外処方が認められています。

オクトレオチド

オクトレオチドは、消化管ホルモン産生腫瘍、先端巨大症、下垂体性巨人症などの症状の改善に使用される持続性ソマトスタチンアナログ製剤です。

がん患者で消化管閉塞による悪心や嘔吐を緩和させることに使用されることがあり、院外処方することは可能です。

投与する際にはシリンジポンプを用いて投与されることがあります。

シリンジポンプについてはPCAポンプに関する記事で紹介しているので、参考にしてください。

【実践!!薬局の在宅訪問】PCAポンプの種類と仕組みについて徹底解説この記事では、PCAポンプについて解説します。 実際に触ったことがない人にとってはPCAポンプってそもそも何のポンプ?種類とかあるの?...

「在宅中心静脈栄養法用輸液」「電解質輸液」「脂肪乳剤」

高カロリー輸液をいい、高カロリー輸液以外にビタミン剤、高カロリー輸液用微量元素製剤及び血液凝固阻止剤を投与することができる。

なお、上記に掲げる薬剤のうち、処方医及び保険薬剤師の医学薬学的な判断に基づき適当と認められるもめについて、在宅中心静脈栄養法用輪液に添加して投与することは差し支えない。

経口摂取不能又は不十分な場合の水分・電解質の補給・維持を目的とした注射薬(高カロリー輸液を除く。)をいい、電解質製剤以外に電解質補正製剤(電解質製剤に添加して投与する注射薬に限る。)、ビタミン剤、高カロリ一輪液用微量元素製剤及び血液凝固限止剤を投与することができる。

ルネオパNF輸液などの高カロリー輸液や電解質輸液も処方可能です。

その他、ビタミン剤や微量元素はリストには記載されていませんが、高カロリー輸液や電解質輸液に添加する目的であれば院外処方が認められています。

高カロリー輸液や電解質輸液とセットで処方してもらう必要があることに留意してください。

また、脂肪乳剤はかつては不可でしたが、2016年に可能となりました。

 

注射用抗菌薬

注射用抗菌薬についても、かつては院外処方不可でしたが、2014年度診療報酬改定において「電解質製剤」と共に認められました。

抗菌薬の中には抗真菌薬も含まれており、全ての注射用抗菌薬が処方可能です。

レムデシビル製剤

新型コロナウイルス感染症治療薬であるレムデシビル製剤 (ベクルリー点滴静注液100mg) も院外処方は可能です。

強心剤

2024年6月からは強心剤としてドブタミン塩酸塩製剤、ドパミン塩酸塩製剤、ノルアドレナリン製剤が院外処方可能になっています。

注射を使用した際のポンプ管理料も算定できるようになりました。

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院外処方出来ないもの

基本的にリストに記載されていない注射剤は院外処方は出来ません!

その際には

  • 主治医と相談し、処方可能な薬剤への変更を相談
  • 医療機関で院内処方として払い出してもらう

 

処方出来ないものの代表例

  • アセトアミノフェン注射液 (アセリオ静注液1000mgバッグ)
  • ハロペリドール注 (セレネース注5mg)
  • ミダゾラム注射液 (ドルミカム注射液10mg)
  • デノスマブ注射液 (プラリア皮下注、ランマーク皮下注)
  • ゾレドロン酸点滴静注 (ゾメタ点滴静注4mg)
  • フロセミド注 (ラシックス注)

癌性疼痛で使用されることのあるアセリオ静注液ですが、院外処方は認められていません。

一方で、NSAIDsであるロピオン静注 (フルルビプロフェン) は院外処方可能です。

 

終末期に鎮静で使用されるダゾラム注射液、ハロペリドール注や、骨転移で使用されるデノスマブやゾレドロン酸についても院外処方は出来ません。

そのため、どうしても使用したい場合は医療機関から払い出してもらうこととなります。

 

条件によって処方可能なもの

単独では処方できないものの、条件によって処方可能な注射剤もあります。

中心静脈栄養法輸液とは高カロリー輸液をいい、高カロリー輸液以外にビタミン剤、高カロリー輸液用微量元素製剤及び血液凝固阻止剤を投与することができる。

  • ヘパリンNa注
  • ヘパリンNaロック用シリンジ、ヘパフラッシュ

⇒ヘパリンカルシウムであればリストに記載あるがヘパリンナトリウムは院外処方不可。
高カロリー輸液と併用であれば可能(ロック用については地域差あり)

 

  • 高カロリー輸液用総合ビタミン剤 (ビタジェクト注シリンジ、ネオラミン・マルチV注射用など)
  • 電解質補正製剤 (アスパラカリウム注10mEq、塩化ナトリウム注10%、カルチコール注射液8.5%、KCL注20mEqキット)

⇒ リストに記載がないため、単独での処方は不可。
ただし、高カロリー輸液や電解質輸液と併用であれば可能。

まとめ

この記事では在宅医療で使用される注射剤について院外処方の可否の観点からまとめました。

基本的にはリストを確認することが必要ですが、ある程度これは大丈夫、これは出来ないというのを覚えておくと良いと思います。

まとめ資料を以下に掲載しておきます。

ダウンロードして皆様の薬局でご活用ください。

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