在宅医療の現場では薬局でポンプレンタルを行うこともあります。
今回の記事ではそのときに知っておくべき診療報酬について解説します。
薬局には関係ないと思っていませんか?
レンタル料金の設定や請求において医療機関の保険制度を知らないとスムーズに話が進まないこともあります。
この記事を読むことで主に輸液ポンプとPCAポンプに関連する診療報酬を理解することが出来ます。
細かい要件やカルテ記載事項などは省略します。
今回ポイントとなる診療報酬は以下の5つです!
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
C108 在宅麻薬等注射患者指導管理料 1500点
C108-3 在宅強心剤持続投与指導管理料 1500点
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
C161 注入ポンプ加算 1250点
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算 2500点
この記事の前半では各報酬について解説し、後半は理解しやすいように薬局でレンタルを行うことの多いポンプの種類ごとに記載します。
各報酬についての解説
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
注 在宅中心静脈栄養法を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅中心静脈栄養法に関する指導管理を行った場合に算定する。
詳細については外部記事をご参照ください。
対象となる患者のポイントは以下の通り
- 原因疾患の如何にかかわらず、中心静脈栄養以外に栄養維持が困難な者
- 当該療法を行うことが必要であると医師が認めた者
- 安定した病態であり、在宅での療養を行っている患者自らが実施する
高カロリー輸液を用いている在宅中心静脈栄養法 (HPN) を実施してる患者が対象となります。
C108 在宅麻薬等注射患者指導管理料
C108 在宅麻薬等注射患者指導管理料 1500点
1.悪性腫瘍の場合
2.筋萎縮性側索硬化症又は筋ジストロフィーの場合
3.心不全又は呼吸器疾患の場合
注1 1については、悪性腫瘍の患者であって、入院中の患者以外の末期の患者に対して、在宅における麻薬等の注射に関する指導管理を行った場合に算定する。
注2 2については、筋萎縮性側索硬化症又は筋ジストロフィーの患者であって、入院中の患者以外の患者に対して、在宅における麻薬等の注射に関する指導管理を行った場合に算定する。
注3 3については、1又は2に該当しない場合であって、緩和ケアを要する心不全又は呼吸器疾患の患者であって、入院中の患者以外の末期の患者に対して、在宅における麻薬の注射に関する指導管理を行った場合に算定する。
従来は「在宅悪性腫瘍等患者指導管理料」という名称でしたが2024年診療報酬改定で「在宅麻薬等注射患者指導管理料」となりました。
「3.心不全又は呼吸器疾患の場合」が追加され、抗悪性腫瘍剤の投与は別の指導管理料が新設されています。
心不全や呼吸器疾患など非がん終末期ケアに対して今回の改訂では手厚くなっています。
「在宅における麻薬(等)の注射に関する指導」ポイントは以下のようなものです。
- 末期の悪性腫瘍又は筋萎縮性側索硬化症若しくは筋ジストロフィー、心不全又は呼吸器疾患の患者
- 持続性の疼痛があり鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しないため注射による鎮痛剤注入が必要なもの
- 在宅において自ら実施する鎮痛療法又は化学療法
麻薬注射剤などによる疼痛コントロールを行っている患者が対象となります。
C108-3 在宅強心剤持続投与指導管理料
C108-3 在宅強心剤持続投与指導管理料 1500点
注 別に厚生労働大臣が定める注射薬の持続投与を行っている入院中の患者以外の患者に対して、在宅心不全管理に関する指導管理を行った場合に算定する。
2024年度に新設された指導管理料です。
従来、心不全患者に対する強心剤の持続投与については算定できませんでしたが、これにより算定できるようになりました。
また、これに伴い、強心剤の注射薬の院外処方も可能となっています。
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
注 在宅中心静脈栄養法を行っている入院中の患者以外の患者に対して、輸液セットを使用した場合に、第1款の所定点数に加算する。
「第1款の所定点数」というのは指導管理料のことです。
先に解説した【C104在宅中心静脈栄養法指導管理料】や【C108在宅抗悪性腫瘍等患者指導管理料】などが該当します。
「輸液セット」とは、在宅で中心静脈栄養法を行うに当たって用いる輸液用器具(輸液バッグ)、注射器及び採血用輸血用器具(輸液ライン)が該当します。
1月6組までは包括された点数となります。
7組以上使用した場合のみ、輸液ラインやフーバー針や輸液バッグを使用した分だけ算定することになります。
C161 注入ポンプ加算
C161 注入ポンプ加算 1250点
注 在宅中心静脈栄養法、在宅成分栄養経管栄養法若しくは在宅小児経管栄養法を行っている入院中の患者以外の患者、在宅における鎮痛療法若しくは悪性腫瘍の化学療法を行っている入院中の患者以外の末期の患者、心不全又は呼吸器疾患の末期に対する注射による麻薬の投与を行っている患者又は別に厚生労働大臣が定める注射薬の自己注射を行っている入院中の患者以外の患者に対して、注入ポンプを使用した場合に、2月に2回に限り、第1款の所定点数に加算する。
「注入ポンプ」とは、在宅で中心静脈栄養法、成分栄養経管栄養法若しくは小児経管栄養法、鎮痛療法若しくは悪性腫瘍の化学療法又は注射薬の精密自己注射を行うに当たって用いる注入ポンプをいいます。
「在宅における鎮痛療法若しくは悪性腫瘍の化学療法」
- 末期の悪性腫瘍又は筋萎縮性側索硬化症若しくは筋ジストロフィーの患者
- 持続性の疼痛があり鎮痛剤の経口投与では疼痛が改善しないため注射による鎮痛剤注入が必要なもの又は注射による抗悪性腫瘍剤の注入が必要なもの
- 在宅において自ら実施する鎮痛療法又は化学療法
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算 2500点
注 在宅における悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている入院中の患者以外の末期の悪性腫瘍の患者又は、心不全又は呼吸器疾患の末期に対する注射による麻薬の投与を行っている患者に対して、携帯型ディスポーザブル注入ポンプを使用した場合に、第1款の所定点数に加算する。
輸液セット加算と同様に6セットまではポンプは携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算に包括されており、7セット目以降に保険請求可能です。
各ポンプごとの診療報酬
ディスポーザブルPCAポンプ
ここではディスポーザブルPCAポンプに関わる診療報酬について解説します。
該当するポンプはシュアーフューザー🄬A PCAポンプなど従来から使用されてきたバルーン式に加えて、最近話題のクーデックエイミーPCAポンプもこちらに該当します。
クーデックエイミーPCAポンプについては以下の記事で紹介しています。
関係してくる診療報酬は以下となります。
C108 在宅麻薬等注射指導管理料 1500点
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算 2500点
PCAポンプによる持続鎮痛療法を受けている終末期がん患者は「在宅における鎮痛療法又は悪性腫瘍の化学療法」に該当するため、【C108 在宅抗悪性腫瘍等患者指導管理料】を算定することが出来ます。
さらに携帯型ディスポーザブル注入ポンプを使用しているため【C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算】を加算することになります。
機械式PCAポンプ
該当するPCAポンプはCADD Legacy PCAポンプやテルモ小型シリンジポンプなどになります。
関係する診療報酬は以下になります。
C108 在宅麻薬等注射指導管理料 1500点
C161 注入ポンプ加算 1250点
ディスポーザブル注入ポンプと同様に【C108 在宅抗悪性腫瘍等患者指導管理料】を算定することが出来ます。
機械式の注入ポンプとなるため【C161 注入ポンプ加算】を加算することになります。
輸液ポンプ
カフティポンプなど高カロリー輸液投与に用いるポンプが該当します。
関係する診療報酬は以下になります。
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
C161 注入ポンプ加算 1250点
在宅中心静脈栄養法を受けているので、【C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料】を算定します。
そして輸液セットを使用し、輸液ポンプを使用しているため、【C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算】および【C161 注入ポンプ加算】を算定することが出来ます。
注意すべきポイント
ここまではそれぞれのポンプを1台ずつ使用した場合について解説してきました。
在宅医療の現場では複数のポンプを組み合わせて使用することがありますが、その際に重複して算定できないものもあるので注意していきましょう。
- 指導管理料は1つしか算定できない
- 注入ポンプ加算の目的は1つのみ
実際のケースで解説します。
輸液ポンプ+機械式PCAポンプ
カフティポンプによる中心静脈栄養法とCADD Legacy PCAポンプによるオピオイド持続注射を行っている例について考えてみます。
算定について見ていきます。
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
C108 在宅麻薬等注射指導管理料 1500点
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
C161 注入ポンプ加算 1250点×2台
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
C161 注入ポンプ加算 1250点
違いは分かりますか?
まず「指導管理料は1つしか算定出来ない」という点です。
悪い例では【C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料】と【C108 在宅抗悪性腫瘍等患者指導管理料】を併せて算定しています。
これはどちらか一方しか算定出来ません。
従って通常高い方を優先するので【C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料】のみを算定することになります。
続いて「注入ポンプ加算は1つの目的でしか算定できない」という点です。
悪い例では注入ポンプ加算を2台分請求しています。
カフティポンプとCADD Legacy PCAポンプどちらも注入ポンプに該当していますが、これは1月に1台分しか請求できません。
(※地域による)
従って注入ポンプ加算は1台分のみの請求となります。
輸液ポンプ+ディスポーザブルPCAポンプ
今度はCADD Legacy PCAポンプではなく、ディスポーザブル注入ポンプであるクーデックエイミーPCAポンプを使用する例について考えてみます。
算定について見ていきます。
C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料 3000点
C160 在宅中心静脈栄養法用輸液セット加算 2000点
C161 注入ポンプ加算 1250点
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算 2500点
機械式と同様に指導管理料は1つしか算定出来ないので高い方の【C104 在宅中心静脈栄養法指導管理料】を算定します。
機械式と異なる点として【C161 注入ポンプ加算】に加えて【C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算】も算定することが出来ます。
2つの例を比べることによりPCAポンプとしてクーデックエイミーPCAポンプを使用することによるメリットが大きいことがよく分かります。
算定できない医薬品
終末期患者などではPCAポンプを用いてサンドスタチン皮下注用 (オクトレオチド) やドルミカム注 (ミダゾラム) を投与することがあります。
これらは「鎮痛療法若しくは悪性腫瘍の化学療法」に該当しないため【C161 注入ポンプ加算】や【C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算】は算定できません。
注意してください。
まとめ
今回の記事ではポンプレンタルに関する診療報酬について解説しました。
薬局とは直接関係しないように思われますが、薬局から医療機関に貸し出す際には知っておくべき知識です。
特に複数のポンプを使用するケースには要注意なので、繰り返しこの記事をご確認ください。
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