在宅の知識

【薬局の在宅訪問】最適な訪問指示の形式

この記事では「医師からの訪問指示」について解説します。

在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費などを算定するうえで必要な要件となっています。

電話で「〇〇さんの訪問お願いします」これだけで良いのでしょうか?

最適な指示の形式について解説します。

 

結論から言うと「処方箋の備考欄への記載」がベストです!

他の方法ではいけないのか、なぜ「処方箋の備考欄への記載」が良いのかについては記事を最後まで読んで頂ければ理解できます。

指示期間の入った訪問薬剤管理指導指示書(word)のひな型のダウンロードも可能です!

訪問指示の必要性

まずはなぜ訪問指示が必要なのか確認しましょう。

訪問指導料の算定要件からみていきます。

在宅患者訪問薬剤管理指導料 (概要 一部抜粋)

注1 あらかじめ在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨を地方厚生局長等に届け出た保険薬局において、在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、医師の指示に基づき、保険薬剤師が薬学的管理指導計画を策定し、患家を訪問して、薬学的管理及び指導を行った場合に、単一建物診療患者(当該患者が居住する建物に居住する者のうち、当該保険薬局が訪問薬剤管理指導を実施しているものをいう。)の人数に従い、患者1人につき月4回(末期の悪性腫瘍の患者及び中心静脈栄養法の対象患者にあっては、週2回かつ月8回)に限り算定する。この場合において、1から3までを合わせて保険薬剤師1人につき週40回に限り算定できる。

居宅療養管理指導の定義(介護保険法第8条第1項、第6項、介護保険法施行規則第9条、第9条の2)より一部抜粋

厚生労働省令で定める療養上の管理及び指導のうち薬剤師により行われるものは、居宅要介護者の居宅において、医師又は歯科医師の指示(薬局の薬剤師にあっては、医師又は歯科医師の指示に基づき策定される薬学的管理指導計画)に基づいて実施される薬学的な管理及び指導とする。

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在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 (概要 一部抜粋)

注1 1及び2については、訪問薬剤管理指導を実施している保険薬局の保険薬剤師が、在宅での療養を行っている患者であって通院が困難なものの状態の急変等に伴い、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関の保険医又は当該保険医療機関と連携する他の保険医療機関の保険医求めにより、当該患者に係る計画的な訪問薬剤管理指導とは別に、緊急に患家を訪問して必要な薬学的管理及び指導を行った場合に、1と2を合わせて月4回に限り算定する。ただし、情報通信機器を用いて必要な薬学的管理及び指導を行った場合には、在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料として、59点を算定する。

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在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の要件いずれにも「医師の指示」「求め」という文言が含まれています。

従って、これらの訪問指導料を算定するためには医師による訪問指示が必要となります。

法的な文言

訪問指示の必要性については理解できたと思います。

それでは実際に指示はどのような形式でもらうのが良いのでしょうか。

介護保険、医療保険のQ&Aで掲載されていますので、紹介します。

まずは平成18年度改定の疑義解釈資料より。

居宅療養管理指導
【医師・歯科医師の居宅療養管理指導関係】

(問8)薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導における医師・歯科医師からの指示は、医師・歯科医師による居宅療養管理指導の情報提供でもよいのか。



(答)医師・歯科医師による居宅療養管理指導の情報提供でも構わない。この場合の情報提供は、医師・歯科医師と薬局薬剤師がサービス担当者会議に参加し、医師・歯科医師から薬局薬剤師が行う居宅療養管理指導の必要性を提案する方法や、サービス担当者会議に参加が困難な場合や開催されない場合には、文書(メールやFAXでも可)により薬局薬剤師に対して情報提供を行う方法が考えられる。

平成18年4月改定関係Q&A(vol.1)

 医師からの情報提供書やサービス担当者会議に参加した際に医師や歯科医師からの指示が、「医師の指示」となるとされています。

この文言からは口頭の指示でも問題なさそうですね。

続いて令和3年度介護報酬改定の疑義解釈資料が以下となります。

【居宅療養管理指導】
○ 医師又は歯科医師の指示

問3 居宅療養管理指導における医師又は歯科医師の指示は、どのような方法で行えばよいか。

(答)
・指示を行うにあたっては、当該居宅療養管理指導に係る指示を行う医師又は歯科医師と同じ居宅療養管理指導事業所に勤務する者に指示する場合や緊急等やむを得ない場合を除き、診療状況を示す文書処方箋等(メール、FAX等でも可)(以下「文書等」という。)に、「要訪問」「訪問指導を行うこと」等、指示を行った旨がわかる内容及び指示期間(6月以内に限る。)を記載すること。ただし、指示期間については、1か月以内(薬剤師への指示の場合は処方日数(当該処方のうち最も長いもの)又は1か月のうち長い方の期間以内)の指示を行う場合は記載不要であり、緊急等やむを得ない場合は後日指示期間を文書等により示すこと。

令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)

続いて医療保険の令和4年度改定資料より

【在宅患者訪問薬剤管理指導料】
問 37 在宅患者訪問薬剤管理指導における医師の指示は、どのような方法で
行えばよいか。
(答)医師による訪問の指示については、診療状況を示す文書処方箋等(電子メール、FAX 等によるものを含む。以下「文書等」という。)に、「要訪問」「訪問指導を行うこと」等の指示を行った旨が分かる内容及び処方日数を
記載することにより行われる必要がある。ただし、処方日数については、処
方から1か月以内の訪問を指示する場合は記載されている必要はなく、緊
急やむを得ない場合においては、後日文書等により処方日数が示されてい
ればよい。

令和4年診療報酬改定 疑義解釈資料の送付について(その1)(令和4年3月31日)

 

上記のように原則として文書による指示とされています。

さらにこちらでは指示期間 (最長6ヶ月) の記載が必須になっております。

ただし、処方箋での記載であれば指示期間は省略可能であり、その際は処方日数もしくは1か月の期間と明記されました。

指示の形式

ここまでの情報を踏まえて、最適な指示について考えてみます。

考えられる指示の形式は以下の3つが考えられます。

  • 口頭
  • 訪問指示書など文書
  • 処方箋の備考欄への記載

他にあるかもしれませんが、今回の記事ではこの3つに絞って考えていきます。

口頭指示

前述したように令和3年度介護報酬改定からは文書による指示が必須となりました。

口頭指示だけではNGとなるので、その場合は処方箋受付時に疑義照会を行い、指示を受けた旨を処方箋備考欄に薬剤師が記載しておく必要があります。

つまり毎回、疑義照会による指示確認が必要となってきます。

令和2年度以前では、口頭でも認められる可能性はありましたが、現在は不適切となります。

これは薬局側、医療機関側にとっても手間になるので、適切ではないと考えます。

訪問指示書など文書によるもの

訪問指示書などの文書による指示については条件は満たしていますが、注意すべき点がいくつかあるので解説していきます。

  • 半年に一度は発行してもらう必要がある
  • 医療機関に定型の文書がない可能性がある
  • 大きな医療機関では窓口・文書発行料・依頼者を確認する

半年に一度発行が必要

まず1点目は指示期間 (6ヶ月以内) を記載する必要があるということです。

つまり最低でも半年ごとに発行してもらう必要あります。

傷病名や治療経過についても記載されていることが多いため、1度は発行してもらうのが良いです。

文書の定型

医療機関の電子カルテやシステム内に定型の文書がある場合が多いですが、ない場合は薬局で準備して持っていき、依頼することもあります。

参考までに訪問薬剤管理指導指示書のひな型(word)を以下に載せておきます。

指示期間が記載されているものは少ないです。

必要な方はダウンロードし、必要に応じて修正して使用してください。
(様式には責任を持てませんので、必ずご自身の責任でご利用ください)

ダウンロード

 

文書発行の窓口・依頼者・費用

また、指示書をもらう窓口は医療機関によって様々なので、総合病院など大きな医療機関では地域連携室などに問い合わせて、確認します。

本人や家族が直接依頼しなければならないこともありますので、その点にも注意が必要です。

さらに文書発行料が患者さんに請求されることがあるので、事前に確認して、了承を得ておきましょう

処方箋の備考欄への記載

最後に「処方箋の備考欄への記載」のケースです。

令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.5)に記載されているように、処方箋での訪問指示の場合は指示期間を省略可能で、処方日数もしくは1か月のいずれか長い方が指示期間としても良いとなっています。

処方箋に記載することは医療機関側にとっても電子カルテシステムでの設定で済むため(なければ定型文のスタンプなどを押す)負担は少ないと考えられます。

指示の文言については細かい規定はなく、「訪問指示」というニュアンスがくみ取れるものであればOKです。

処方箋への訪問指示の記載例

  • 訪問指示
  • 居宅療養管理指導
  • 訪問薬剤指導お願いします
  • 居宅訪問

訪問指示の記載された処方箋の例

複数の医療機関

複数の医療機関を受診する場合は1か所在宅療養を担う医療機関からの指示を得ておけばOKです。

 

他の医療機関については「在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医」として医師から確認しておきましょう。

 

まとめ

今回の記事では訪問指示の形式について解説しました。

「処方箋の備考欄への記載」が最適である理由を改めてまとめておきます。

処方箋の備考欄への記載

  • 指示期間の記載は不要。
  • 処方日数又は1か月のうち長い方が指示期間
  • 医療機関の手間が少ない

また、文書による指示にもメリットがあるので一度は訪問指示書を発行しておいてもらうことを推奨します。

まとめ資料を以下に掲載しておきます。

ダウンロードして皆様の薬局でご活用ください。

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