2026年度(令和8年度)調剤報酬改定では、従来の「重複投薬・相互作用等防止加算」および「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が廃止され、新たに「調剤時残薬調整加算」と「薬学的有害事象等防止加算」へ再編されました。
今回の改定は単なる名称変更ではありません。
「残薬調整」と「副作用・相互作用などの薬学的介入」を明確に分け、それぞれを適切に評価する制度へと大きく見直されたことがポイントです。
特に在宅医療では、薬剤師が患者の生活や服薬状況を把握しやすいため、より積極的な処方提案が期待されています。
この記事では、薬学的有害事象等防止加算について、在宅医療に焦点を当てて詳しく解説します。
調剤時残薬調整加算についてはこちらの記事を参考にしてください。
改定のポイント
今回の改定で最も大きな変更点は、残薬調整と薬学的介入が別々に評価されるようになったことです。
これまでの重複投薬・相互作用等防止加算では、
- 残薬調整
- 重複投薬の解消
- 相互作用の回避
- 副作用防止
が一つの加算で評価されていました。
しかし実際には、それぞれ必要となる薬剤師の業務は異なります。
そこで今回、
残薬に対する介入
↓
調剤時残薬調整加算
副作用・重複投薬・相互作用への介入
↓
薬学的有害事象等防止加算
へと整理されました。
在宅医療では何が変わる?
在宅医療では今回の改定が非常に追い風になります。
なぜなら、残薬調整と薬学的有害事象等防止加算を同時に算定できるようになったからです。
例えば、訪問時に
- 残薬が大量にある
- 血圧が低く降圧薬を減量したい
- 腎機能低下に合わせて投与量を変更したい
- 眠気が強く睡眠薬を減量したい
といった状況を確認した場合、薬剤師は医師へ処方提案を行います。
その結果、
- 残薬を調整した
- 副作用を回避するため処方変更した
という両方の介入があれば、調剤時残薬調整加算と薬学的有害事象等防止加算の両方を算定できるようになりました。
これは今回の改定で最も実務的な変更点の一つです。
薬学的有害事象等防止加算とは?
服用薬剤を一元的・継続的に管理する中で、残薬調整以外の目的で医師へ処方提案を行い、その結果、処方変更が行われた場合に評価される加算です。
対象となる薬学的介入には、
- 重複投薬の解消
- 相互作用の回避
- 副作用の防止
- 腎機能・肝機能に応じた用量調整
- 病態変化に応じた減薬
- ポリファーマシー改善
などがあります。
点数
| 区分 | 点数 | 対象 |
|---|---|---|
| イ | 50点 | 在宅患者・処方箋交付前に提案 |
| ロ | 50点 | 在宅患者・処方箋受付後に処方変更 |
| ハ | 50点 | かかりつけ薬剤師が実施 |
| ニ | 30点 | 上記以外 |
在宅医療で評価が高い理由
今回の改定では、処方箋が発行される前の介入が高く評価されています。これは在宅医療ならではの特徴です。
薬剤師は定期訪問時に
- バイタル
- 副作用
- 残薬
- アドヒアランス
- 家族からの相談
を把握しています。その情報をもとに、医師が処方箋を発行する前に「この薬は減量できそうです」「最近ふらつきがあるため降圧薬を見直しませんか」「眠気が強いため睡眠薬の変更を提案します」などの処方提案を行うことができます。
このような事前提案が評価されたのが区分「イ」です。
訪問薬剤管理医師同時指導料との相性が良い
今回新設された訪問薬剤管理医師同時指導料との相性も非常に良い制度です。
例えば、医師と薬剤師が同時訪問し、診察中に
- 残薬確認
- 副作用確認
- バイタル確認
- アドヒアランス確認
を行い、その場で
- 減薬
- 剤形変更
- 用量変更
を提案します。これにより、
訪問薬剤管理医師同時指導料
薬学的有害事象等防止加算
調剤時残薬調整加算
といった複数の薬学的評価につながる可能性があります。
つまり、診察の場で薬剤師が専門性を発揮するほど評価される制度設計になったといえるでしょう。
算定できるケース
ケース①
残薬が10日分ある。
さらに降圧薬によるふらつきがある。
↓
残薬調整、降圧薬の減量を提案。
↓
採用
算定
〇 調剤時残薬調整加算
〇 薬学的有害事象等防止加算
ケース②
眠気が強い。
睡眠薬を減量提案。
↓
採用
算定
〇 薬学的有害事象等防止加算
ケース③
残薬だけ調整。
↓
処方日数のみ変更。
算定
〇 調剤時残薬調整加算
算定時の注意点
薬学的有害事象等防止加算を算定するためには、
薬剤服用歴へ以下の内容について詳細に記録する必要があります。
- 処方提案の内容
- 薬学的根拠
- 医師とのやり取り
- 処方変更内容
- 実施日時
また、お薬手帳の活用実績が著しく低い薬局では算定できないため、日頃からお薬手帳の活用を推進することも重要です。
まとめ
今回の改定で評価されたのは、薬剤師が薬学的な視点から患者の状態を評価し、医師へ積極的に処方提案することです。
特に在宅医療では、残薬確認、副作用モニタリング、バイタル確認、患者・家族からの聞き取りなど、多くの情報を薬剤師が把握できます。
そして今回の改定では、残薬調整と薬学的有害事象への介入をそれぞれ独立して評価する制度となり、条件を満たせば調剤時残薬調整加算と薬学的有害事象等防止加算を同時に算定できるようになりました。
これは在宅薬剤師にとって非常に大きな変更です。
これからの在宅医療では、「薬を届ける薬剤師」ではなく、患者の生活や病態を把握し、医師へ積極的に処方提案を行う薬物療法マネジメントの専門職としての役割が、これまで以上に求められるでしょう。
これからも、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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