オピオイドの投与経路変更で注射剤に変更することがあります。
医師「フェントステープからモルヒネの持続注射に切り替えたい」
そんなとき、投与量はどう考えますか?
その際の投与量の(タイガー薬剤師流の)考え方を紹介します。
この記事を読めば、医師と電話や対面で話しながら投与量から希釈倍率と投与速度について計算できるようになります。
1日投与量の考え方
結論としては24mg/日をベースに考える!
(特にオキシコドン・モルヒネの場合)
これだけ頭に入れておけば電話しながらでも医師に適切な投与設計を提案することが出来ます。
なぜなのか?
モルヒネ注・オキシコドン注・ヒドロモルフォン注は1%製剤の規格があります。
(10mg/1mL・50mg/5mL・20mg/2mL)
この規格で0.1mL/時で投与したときの1日投与量が24mgになるからです。
これを基本として・・・
上の表のようになります。
10倍希釈を除けば全て間隔は24の約数 (24、12、6)となっていることが分かります。
表全体を覚えなくても、基本となる原液0.1mLだけ分かっていれば頭の中で計算は出来ます。
したがって麻薬の注射の投与量を決める際には、24の倍数や約数で投与量を考えると分かりやすいです。
モルヒネ注、ヒドロモルフォン注は1%以外に他の濃度の製剤も存在しますが、今回の記事では1%製剤に限定して解説しています。
- モルヒネ注4% (200mg/5mL)
- ヒドロモルフォン注0.2% (2mg/1mL)
症例で考える
いくつか例を示します。
ここでは換算量を以下のようにしています。
経口モルヒネ:経口オキシコドン:フェントステープ=30:20:1
経口モルヒネ:注射モルヒネ/オキシコドン=2:1
注射モルヒネ:注射ヒドロモルフォン=10:1
(モルヒネ→ヒドロモルフォンの場合)
換算についてはこちらの記事でも少し紹介しています。
フェントステープ→モルヒネ・オキシコドン注
フェントステープ2mgからモルヒネ・オキシコドン注へ変更する場合を考えていきます。
疼痛が落ち着いている場合とします。
フェントステープ2mg→オキシコドン(モルヒネ)30mg/日
交差耐性不一致や経皮から皮下注への経路変更も考慮して減量することが一般的です。
30mgからやや減らして24mg/日とします。
原液0.1mL/時や2倍希釈0.2mL/時にします。
フェントステープ→ヒドロモルフォン注
続いてフェントステープ4mgからヒドロモルフォン注へ変更する場合を考えます。
こちもら疼痛が落ち着いている場合です。
フェントステープ4mg→ヒドロモルフォン注6mg/日
交差耐性不一致や経皮から皮下注への経路変更も考慮して減量。
ヒドロモルフォン注6mgからやや減らして4.8mg/日。
表より10倍希釈 0.2mL/時
オキシコドン経口→持続皮下注射
オキシコドン経口40mg/日からオキシコドン注へ疼痛コントロール不良のため変更する場合をみていきます。
オキシコドン経口40mg→注射30mg/日
コントロール不良なのでやや増量して36mg/日
表より2倍希釈0.3mL/時とすれば良いことが分かります。
他の考え方として
疼痛コントロール不良であることからベース増量を考慮した上で換算する
オキシコドン経口40→60mg/日となり、注射に換算すると45mg/日。
経口から注射剤へ変更となるため直接作用を考慮してやや減量し、36mg/日となるので結果的に同じく2倍希釈0.3mL/時となります。
呼吸苦に対する少量投与
医師より「呼吸苦のためモルヒネを少量注射で使いたい。10mgくらいかな。」
モルヒネ6mg/日もしくは12mg/日で可能か医師と相談します。
表よりモルヒネ注1%を4倍希釈で0.1 or 0.2mL/時となります。
まとめ
いかがでしたか?
注射の1日量を計算する際に今回紹介したような考えを基本とすることで、考えやすくなります。
今回の記事では紹介しませんでしたが、モルヒネやヒドロモルフォンの別濃度の規格についても、どうようの考え方でいけます。
モルヒネ注4%はモルヒネ注1%の4倍の濃度、ヒドロモルフォン注0.2%はヒドロモルフォン注1%の1/5の濃度。
当たり前のことですが、今回の記事で紹介した基礎があれば、別濃度も計算することが出来ると思います。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
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