院外処方できる注射剤は限られています。
それでも在宅医療を行っている薬局に「利尿剤など院外処方できない注射剤を在宅で使いたい。」と医師から相談されることがあります。
そのような時に何と答えますか?
「院外処方できないので使えません」
・・・と返答する人は少ないと思います。
「院内処方であれば使えます!」
が多いのでないでしょうか。
これは間違っていませんが、院内処方した注射剤が保険請求できるかは一定の条件があります。
それを知ることで、一歩踏み込んだ提案が出来るようになります。
院内処方で、保険請求可能なものは以下の条件のいずれかに該当する場合に限られます。
- 医師が使用する
- 訪問看護師が週3日以上点滴する
※在宅患者訪問点滴注射指導管理料を算定した場合に限る
どちらかに該当するなら使用薬剤に制限ありません。
以下、詳細に解説していきます。
院外処方できる注射剤
まずは院外処方が可能な注射剤について紹介します。
以下のリストに掲載されている約100種類が院外処方できる注射剤です。
一 療担規則第二十条第二号ト及び療担基準第二十条第三号トの厚生労働大臣が定める保険医が投与することができる注射薬
インスリン製剤、ヒト成長ホルモン剤、遺伝子組換え活性型血液凝固第Ⅶ因子製剤、乾燥濃縮人血液凝固第Ⅹ因子加活性化第Ⅶ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅷ因子製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅷ因子製剤、乾燥人血液凝固第Ⅸ因子製剤、遺伝子組換え型血液凝固第Ⅸ因子製剤、活性化プロトロンビン複合体、乾燥人血液凝固因子抗体迂回活性複合体、性腺刺激ホルモン放出ホルモン剤、性腺刺激ホルモン製剤、ゴナドトロピン放出ホルモン誘導体、ソマトスタチンアナログ、顆粒球コロニー形成刺激因子製剤、自己連続携行式腹膜灌流用灌流液、在宅中心静脈栄養法用輸液、インターフェロンアルファ製剤、インターフェロンベータ製剤、ブプレノルフィン製剤、抗悪性腫瘍剤、グルカゴン製剤、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、ヒトソマトメジンC製剤、人工腎臓用透析液(在宅血液透析を行っている患者(以下「在宅血液透析患者」という。)に対して使用する場合に限る。)、血液凝固阻止剤(在宅血液透析患者に対して使用する場合に限る。)、生理食塩水(在宅血液透析患者に対して使用する場合及び本号に掲げる注射薬を投与するに当たりその溶解又は希釈に用いる場合に限る。)、プロスタグランジンI2製剤、モルヒネ塩酸塩製剤、エタネルセプト製剤、注射用水(本号に掲げる注射薬を投与するに当たりその溶解又は希釈に用いる場合に限る。)、ペグビソマント製剤、スマトリプタン製剤、フェンタニルクエン酸塩製剤、複方オキシコドン製剤、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム製剤、デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステルナトリウム製剤、プロトンポンプ阻害剤、H2遮断剤、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム製剤、トラネキサム酸製剤、フルルビプロフェンアキセチル製剤、メトクロプラミド製剤、プロクロルペラジン製剤、ブチルスコポラミン臭化物製剤、グリチルリチン酸モノアンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩配合剤、アダリムマブ製剤、エリスロポエチン(在宅血液透析又は在宅腹膜灌流を行っている患者のうち腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)、ダルベポエチン(在宅血液透析又は在宅腹膜灌流を行っている患者のうち腎性貧血状態にあるものに対して使用する場合に限る。)、テリパラチド製剤、アドレナリン製剤、ヘパリンカルシウム製剤、オキシコドン塩酸塩製剤、アポモルヒネ塩酸塩製剤、セルトリズマブペゴル製剤、トシリズマブ製剤、メトレレプチン製剤、アバタセプト製剤、pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)製剤、電解質製剤、注射用抗菌薬、エダラボン製剤(筋萎縮性側索硬化症患者に対して使用する場合に限る。)、アスホターゼ アルファ製剤、グラチラマー酢酸塩製剤、脂肪乳剤、セクキヌマブ製剤、エボロクマブ製剤、ブロダルマブ製剤、アリロクマブ製剤、ベリムマブ製剤、イキセキズマブ製剤、ゴリムマブ製剤、エミシズマブ製剤、イカチバント製剤及びサリルマブ製剤、デュピルマブ製剤、ヒドロモルフォン塩酸塩製剤、インスリン・グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト配合剤、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム製剤、遺伝子組換えヒトvon Willebrand因子製剤、ブロスマブ製剤、アガルシダーゼ アルファ製剤、アガルシダーゼベータ製剤、 アルグルコシダーゼ アルファ製剤、イデュルスルファーゼ製剤、イミグルセラーゼ製剤、エロスルファーゼ アルファ製剤、ガルスルファーゼ製剤、セベリパーゼ アルファ製剤、ベラグルセラーゼアルファ製剤、ラロニダーゼ製剤、メポリズマブ製剤、オマリズマブ製剤(季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く。)、テデュグルチド製剤、サトラリズマブ製剤、ビルトラルセン製剤、レムデシビル製剤、ガルカネズマブ製剤、オファツムマブ製剤、ボソリチド製剤、エレヌマブ製剤、アバロパラチド酢酸塩製剤、カプラシズマブ製剤、濃縮乾燥人C1-インアクチベーター製剤、フレマネズマブ製剤及びメトトレキサート製剤
二 (略)
注射剤の院外処方可否については、このリストに掲載されているか確認しましょう。
以下の記事で詳細に解説しています。
院外処方できない注射剤を使用する方法
院外処方できないので、院内で払い出してもらうことになります。
ただし、保険請求できるかは条件によって異なってきます。
このことを理解しておくことで、医師にとって有益な情報となるでしょう。
以下の条件のいずれかに該当する場合に限られます。
- 医師が使用する
- 訪問看護師が週3日以上点滴する
※在宅患者訪問点滴注射指導管理料を算定した場合に限る
医師が使用する場合
医師が直接投与する場合であれば、注射剤は制限なく使用することが出来ます。
連日投与することが必要な場合で、毎回医師が投与することが難しければ算定することは出来ません。
訪問看護師が週3日以上点滴する
医師が週3日以上必要と判断した場合、「在宅患者訪問点滴注射指導管理料」を医療機関は算定することが出来ます。
- 1週間で3日以上
- 点滴 (皮下注、筋注、静注などの指示では✕)
週2日しか投与しないものだと院内処方しても請求できません。
また、点滴 (持続注射) であることが必須です。
毎日だとしても訪問看護師が筋注や皮下注でワンショットの場合では保険請求は出来ません。
実際の例
症例ごとで考えてみましょう。
心不全患者の循環作動薬や利尿剤
心不全患者ではドブタミンなどの循環作動薬やフロセミド注射など使用されますが、これらは院外処方できない薬剤です。
これは点滴 (持続注射) であり、週に3回以上に該当します。
したがって、訪問看護師が週3回以上訪問して投与が行われるのであれば、保険請求可能です。
※ただし、その目的でポンプを使用したとしても注入ポンプ加算等は請求できないので注意が必要です。
注入ポンプ加算については以下の記事を参考にしてください。
デノスマブ (プラリア) を6ヶ月に1回注射したい
デノスマブ製剤は院外処方できません。
そして、これは点滴でもなく、週3日以上にも該当しません。
これは保険請求できないのでしょうか?
正解は保険請求は可能です。
ただし、医師が投与する場合に限ります。
医師が投与する場合であれば使用できる注射剤に制限はなく、全て保険請求可能です。
がん患者にアセトアミノフェン注 (アセリオ) を投与したい
NSAIDsであれば院外処方できますが、アセトアミノフェン注射は院外処方は出来ません。
それでもがん患者の疼痛管理目的で使いたいことがありますね。
これも心不全患者の例と同様です。
週3回以上の点滴で、訪問看護師が投与する場合であれば保険請求可能です。
不眠時にジアゼパム (セルシン) を投与したい
終末期患者等で夜間のせん妄や不眠の際にジアゼパムを投与することがあります。
これはどうでしょうか?
こちらについては医師が投与するのであれば保険請求可能です。
しかし、実際には訪問看護師が投与することもあるので、その際には保険請求は出来ないので、医療機関の持ち出しとなります。
使用できないわけではありません。
まとめ
今回の記事では院外処方できない注射剤を使うときに、医療機関側で払い出した際の保険請求可否についてまとめました。
保険請求可能な条件
- 医師が使用する
- 訪問看護師が週3日以上点滴する
※在宅患者訪問点滴注射指導管理料を算定した場合に限る
これらを理解しておくことで、在宅医とのコミュニケーションが円滑になります。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
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