2024年度(令和6年度)は調剤報酬と介護報酬が改定されます!
今回の記事では、薬局の在宅関連項目についての改定項目を取り上げて解説します。
個人的な感想として、今回の改定は在宅医療にとって良いものばかりでした!!
これまで在宅医療を頑張ってきた薬局が評価されたものと感じます。
※2024年1月26日調剤報酬の短冊発表時点での情報となります。
介護報酬改定
介護報酬改定は2024年1月22日に発表されました。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37407.html
介護報酬で改定された薬局の在宅関連項目は以下の3つとなります。
- 医療用麻薬持続注射加算(250単位)、在宅中心静脈栄養法加算(150単位)が新設
- 終末期がん以外でも「注射による麻薬の投与を受けている者」が週2回、月8回の居宅療養管理指導費算定可能に
- 居宅療養管理指導費が全て1単位増加
どれも薬局にとってはプラスしかない改定です。
加算の新設
これまで医療保険でしか算定出来なかった2つの加算が介護保険利用者 (居宅療養管理指導費) でも算定できるようになりました。
- 医療用麻薬持続注射加算 (250単位)
- 在宅中心静脈栄養療法加算 (150単位)
(令和6年度介護報酬改定における改定事項について,厚生労働省老健局,令和6年1月22日)
それぞれの加算については以下の記事を参考にしてください。
医療保険でも介護保険でも同じ内容の役割を果たしているにも関わらず、医療保険でしか算定できていなかったので、統一されてひと安心です。
もう1点、重要なことは介護保険でも算定可能になったことで、実績が評価しやすくなったということが挙げられます。
今後はこれらの加算の算定実績に応じて地域支援体制加算や、その上位の加算が新設される可能性が考えられます。
これはあくまで予想でしかありませんが、医療用麻薬注射剤や中心静脈栄養(無菌調剤)に関するスキルを身に付けておくことは、今後の薬局業界で重要になってくるのではないかと思います。
週2回、月8回の対象拡大
これまで終末期がん患者と中心静脈栄養法を受けている患者のみが週2回、月8回の対象となっていました。
これが今回の改訂により「注射による麻薬の投与を受けている者」が追加されました。
(令和6年度介護報酬改定における改定事項について,厚生労働省老健局,令和6年1月22日)
心不全や呼吸不全でモルヒネ等の医療用麻薬をPCAポンプで持続注射するケースで算定出来るようになります。
麻薬注射剤を使用すると訪問が頻回になるため、算定回数増加はとても助かります。
PCAポンプに関しては以下の記事を参考にしてください。
居宅療養管理指導費の増加
単一建物居住者が1人 517単位 → 518単位
単一建物居住者が2~9人 378単位 → 379単位
単一建物居住者が10人以上 341単位 → 342単位
情報通信機器を用いて行う場合 45単位 → 46単位
全ての居宅療養管理指導費が1点増加となりました。
介護職員および介護職員以外の処遇改善のために基本報酬に配分されています。
(令和6年度介護報酬改定における改定事項について,厚生労働省老健局,令和6年1月22日)
調剤報酬改定
調剤報酬については2024年1月26日に短冊が発表されました。(今回の記事はここまでの情報をもとに記載しています)
薬局の在宅関連項目についての改定のトピック7選!
- 在宅患者調剤加算が廃止されて「在宅薬学総合体制加算」新設
- 「在宅移行初期管理料」追加
- 「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が事前提案でも算定可能に
- 夜間休日の緊急訪問(麻薬注射やがん末期)に加算追加
- 週2回、月8回対象が麻薬注射剤使用してる患者へ拡大
- 無菌製剤処理加算が麻薬注射剤単独でも算定可能
- がん末期、麻薬注射剤使用患者は緊急訪問薬剤管理指導が月4→8回
在宅薬学総合体制加算
いきなり、初めて聞く加算が新設されました!
詳細についてはこちらの記事に記載しております。
「在宅薬学総合体制加算」の新設に伴い、「在宅患者調剤加算」が廃止されました。
そして在宅薬学総合体制加算は2段階となっております。
在宅薬学総合体制加算1 ●点
在宅薬学総合体制加算2 ●点
算定要件
在宅薬学総合体制加算は、在宅患者に対する薬学的管理及び指導を行うにつき必要な体制を評価するものであり、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料若しくは在宅患者緊急時等共同指導料又は介護保険における居宅療養管理指導費若しくは介護予防居宅療養管理指導費を算定している患者等が提出する処方箋を受け付けて調剤を行った場合に算定できる。ただし、「区分15在宅患者訪問薬剤管理指導料」の(4)において規定する在宅協力薬局が処方箋を受け付けて調剤を行った場合は、この限りでない。
全ての処方せんではなく、在宅患者の処方箋を受け付けた場合のみ調剤基本料に加算することが出来ます。
施設基準
在宅薬学総合体制加算1
ざっくり言うと、従来の「在宅患者調剤加算」とほぼ同じような感じです。
- 在宅訪問の届出
- 直近1年の在宅実績が●件以上
- 開局時間外での緊急対応体制(在宅協力薬局も可)
- 緊急対応体制の周知
- 在宅に関する研修計画と実施
- 医療材料・衛生材料の供給体制
- 麻薬小売業者の免許
以下、原文
(1)地方厚生(支)局長に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出を行っている保険薬局であること。
(2)直近1年間に、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費についての算定回数(ただし、いずれも情報通信機器を用いた場合の算定回数を除く。)の合計が計●●回以上であること(在宅協力薬局として連携した場合(同一グループ薬局に対して業務を実施した場合を除く。)及び同等の業務を行った場合を含む。)。なお、「同等の業務」とは、在宅患者訪問薬剤管理指導料で規定される患者1人当たりの同一月内の算定回数の上限を超えて訪問薬剤管理指導業務を行った場合を含む。
(3)緊急時等の開局時間以外の時間における在宅業務に対応できる体制が整備されていること。緊急時等に対応できる体制の整備については、在宅協力薬局の保険薬剤師と連携して対応する方法を講じている場合も含むものである。
(4)地域の行政機関、保険医療機関、訪問看護ステーション及び福祉関係者等に対して、急変時等の開局時間外における在宅業務に対応できる体制に係る周知を自局及び同一グループで十分に対応すること。また、地域の行政機関又は薬剤師会等を通じて十分に行っていること。
(5)当該保険薬局において、在宅業務の質の向上のため、研修実施計画を作成し、当該計画に基づき当該保険薬局で在宅業務に関わる保険薬剤師に対して在宅業務に関する研修を実施するとともに、定期的に在宅業務に関する外部の学術研修(地域の薬剤師会等が行うものを含む。)を受けさせていること。なお、当該学術研修については、認知症、緩和医療、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた意思決定支援等に関する事項が含まれていることが望ましい。併せて、当該保険薬局の保険薬剤師に対して、薬学等に関する団体・大学等による研修認定の取得、医学薬学等に関する学会への定期的な参加・発表、学術論文の投稿等を行わせていることが望ましい。
(6)医療材料及び衛生材料を供給できる体制を有していること。また、患者に在宅患者訪問薬剤管理指導を行っている保険薬局に対し保険医療機関から衛生材料の提供を指示された場合は、原則として衛生材料を当該患者に供給すること。なお、当該衛生材料の費用は、当該保険医療機関に請求することとし、その価格は保険薬局の購入価格を踏まえ、保険医療機関と保険薬局との相互の合議に委ねるものとする。
(7)麻薬及び向精神薬取締法第3条の規定による麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができること。
在宅薬学総合体制加算2
在宅薬学総合体制加算1の要件を満たした上で以下の要件(1)~(4)を満たすことが必要です。
こちらの方が高い点数となると考えられますが、どれくらい高くなるのか楽しみです。
- (ア)もしくは(イ)
(ア)医療用麻薬●品目以上(注射剤●品目以上含む)の備蓄+無菌調剤設備
(イ)直近一年間の小児在宅の実績●件以上 - 2名以上の保険薬剤師が勤務し、開局時間中は常に調剤応需体制
- 直近一年間のかかりつけ●回以上
- 高度管理医療機器の販売業許可
医療用麻薬備蓄+無菌調剤、もしくは小児在宅を実施している薬局が評価されました。
2名以上の保険薬剤師が必要というのは、開局時間中に在宅訪問する必要があった場合でも常に薬剤師が薬局内にいるようにすることを意味していると考えられます。
また、外来としてもかかりつけ薬局として機能することも求められています。
かかりつけ薬局として、通院できる時から、在宅移行するまで継続して関わることを目指していると考えられます。
在宅専門では算定しづらい加算なので「在宅専門だけでは良くないよ」というメッセージもありそうです。
以下、原文
(1)次のア又はイを満たす保険薬局であること。
ア 以下の①から②までの要件を全て満たすこと。
① 医療用麻薬について、注射剤●●品目以上を含む●●品目以上を備蓄し、必要な薬剤交付及び指導を行うことができること。
② 無菌製剤処理を行うための無菌室、クリーンベンチ又は安全キャビネットを備えていること。
イ 直近1年間に、在宅患者訪問薬剤管理指導料の注5若しくは注6に規定する加算、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の注4若しくは注5に規定する加算又は在宅患者緊急時等共同指導料の注4若しくは注5に規定する加算の算定回数の合計が●●回以上であること。
(2)2名以上の保険薬剤師が勤務し、開局時間中は、常態として調剤応需の体制をとっていること。
(3)直近1年間に、かかりつけ薬剤師指導料及びかかりつけ薬剤師包括管理料の算定回数の合計が●●回以上であること。
(4)医薬品医療機器等法第 39 条第1項の規定による高度管理医療機器の販売業の許可を受けていること。
(5)1の基準を満たすこと。
「在宅移行初期管理料」追加
在宅移行初期管理料(1回に限り) ●●点
こちらも素晴らしい点数が新設されました。
以下の記事で詳細に解説しています。
在宅訪問開始となる前に、残薬や退院時処方薬の確認、服薬管理方法の提案などを行うことが多いですが、これまでは特に算定するものはありませんでした。
それが算定できるようになります。
ざっくり要件をまとめます。
- 在宅移行予定患者(単一建物診療患者1人の場合に限る)を対象
- 患家を訪問して特に重点的な服薬支援を行う必要性があると判断したものを対象
- 在宅療養を担う保険医療機関等と連携して、在宅療養を開始するに当たり必要な薬学的管理及び指導を行った場合
- 訪問指導料を算定した月に1回だけ算定可能
- 計画書作成し、医師・ケアマネに情報提供
- 服薬情報等提供料や外来服薬支援料1は算定不可
個人の在宅患者が対象であることがポイントですね。
また、「特に重点的な服薬支援を行う必要性があると判断」という点についても薬歴等にその判断した理由などを記載しなければならないと考えられます。
初回にしっかりと管理して積極的に算定していきたい加算です。
以下、原文
[算定要件]
(1)在宅での療養へ移行が予定されている通院が困難な患者であって、服薬管理に係る支援が必要なものに対して、当該患者の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、当該患者の同意を得て、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関等と連携して、在宅療養を開始するに当たり必要な薬学的管理及び指導を行った場合に、当該患者において区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料(単一建物診療患者が1人の場合)その他厚生労働大臣が定める費用を算定した初回算定日の属する月に1回に限り算定する。
(2)在宅移行初期管理料は、以下のア及びイを満たす患者のうち、薬学的管理の観点から保険薬剤師が患家を訪問して特に重点的な服薬支援を行う必要性があると判断したものを対象とする。
ア 認知症患者、精神障害者である患者など自己による服薬管理が困難な患者、児童福祉法第 56 条の6第2項に規定する障害児である 18 歳未満の患者、6歳未満の乳幼児、末期のがん患者及び注射による麻薬の投与が必要な患者。
イ 在宅患者訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費及び介護予防居宅療養管理指導費(いずれも単一建物診療患者が1人の場合に限る。)に係る医師の指示のある患者。
(3)実施した薬学的管理及び指導の内容等について薬剤服用歴等に記載し、必要に応じて、薬学的管理指導計画書を作成・見直しすること。また、当該患者の在宅療養を担う保険医療機関の医師及び居宅介護支援事業者の介護支援専門員に対して必要な情報提供を文書で行うこと。なお、この場合の文書での情報提供については、服薬情報等提供料を別途算定できない。
(4)在宅移行初期管理料を算定した日には、区分番号14の2に掲げる外来服薬支援料1は算定できない。
(5)在宅移行初期管理に要した交通費は、患家の負担とする。
「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が事前提案でも算定可能
この管理料自体は依然からありましたが、変更されています。
診察同行時やICTを活用するなど事前に医師に対して処方提案を行い、処方提案が反映された場合でも「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が算定可能になりました!
【在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料】
1 処方箋に基づき処方医に処方内容を照会し、処方内容が変更された場合
イ 残薬調整に係るもの以外の場合 ●●点
ロ 残薬調整に係るものの場合●●点
2 患者へ処方箋を交付する前に処方医と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合
イ 残薬調整に係るもの以外の場合 ●●点
ロ 残薬調整に係るものの場合●●点
これらは1と2、イとロの組み合わせになります。
1は処方箋受付後に疑義照会にて変更となった場合
2は処方箋発行前に医師に提案した場合
イは残薬調整に係るもの以外
ロは残薬調整に係るもの
在宅医療では残薬の確認などを事前に行って医師に提案することや、それ以外でも処方提案することは多いです。
これまで提案して算定できるものとしては「服用薬剤調整支援料」くらいでしたが、「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」が大幅に対象を拡大してくれました。
そして事前の提案のポイントとしては「医療従事者間のICTを活用した服薬状況等の情報共有等により対応」することも認められていることです。
このような取り組みを評価して加算を付けて頂けるというのは、よく見てくれているんだなととても嬉しく思います。
夜間休日の緊急訪問(がん末期、麻薬注射使用患者)に加算追加
時間外(夜間、休日、深夜)に緊急対応した場合の訪問指導料に対する加算が新設されました。
以下の記事で詳細に解説しています。
(在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料)1について、末期の悪性腫瘍の患者及び注射による麻薬の投与が必要な患者に対して、保険医の求めにより開局時間以外の夜間、休日又は深夜に、緊急に患家を訪問して必要な薬学的管理及び指導を行った場合は、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。
イ 夜間訪問加算 ●●点
ロ 休日訪問加算 ●●点
ハ 深夜訪問加算 ●●点
末期の悪性腫瘍患者と麻薬注射剤を使用している患者に対する夜間休日の緊急訪問に対して加算が付きました!
これまでの時間外等加算は基礎額(調剤基本料、薬剤調製料、無菌製剤処理加算、在宅患者調剤加算、調剤管理料の合計額)に対して加算されていましたが、訪問指導料についてつきませんでした。
それが今回の改定では「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」に加算されることとなります。
注意点としては「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1」のみが対象となることですね。
訪問指導を行う主の疾患の急変等による緊急訪問だけなので、注意が必要です。
1と2の違いについては以下の記事を参考にしてください。
週2回、月8回対象が麻薬注射剤使用してる患者へ拡大
在宅患者訪問薬剤管理指導料について、注射による麻薬の投与が必要な患者に対する定期訪問の上限回数を週2回かつ月8回までに見直す。
こちらは介護保険と同様で、これまでは訪問の上限回数が週2回かつ月8回になるのは末期の悪性腫瘍患者と中心静脈栄養法の対象患者だけでしたが、注射による麻薬の投与が必要な患者にも拡大されました。
呼吸不全や心不全でモルヒネを投与する患者もいるので、嬉しい改定です。
末期悪性腫瘍患者、麻薬注射剤使用患者は緊急訪問薬剤管理指導が月4→8回
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の緊急訪問の回数上限について、末期の悪性腫瘍や注射による麻薬の投与が必要な患者の場合は、現行の月4回から原則として月8回に見直す
がん患者や麻薬注射を必要とする患者では終末期の訪問回数が頻回となり、緊急訪問薬剤管理指導の回数が4回でしたが、それを超えて訪問することもあります。
上限が8回に増えることで、訪問して何も算定出来ないということが少なくなるのではないかと考えられます。
これも嬉しい改定です。
無菌製剤処理加算が麻薬注射剤単独でも算定可能
医療用麻薬を希釈せず原液のまま注入器等に無菌的に調製した場合について、無菌製剤処理加算の評価の対象範囲に加える。
麻薬注射剤を使用していて投与量が多くなってくると原液のみの充填になることがあります。
これまではそのような場合、無菌製剤処理加算は算定出来ませんでしたが、算定できるようになりました!
無菌製剤処理加算については以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回の改定では在宅医療、特に緩和ケアや医療的ケア児に対する在宅医療の取り組みが強く評価されました。
新設された項目は、これまで取り組んできた内容が評価されるようになったと捉えられます。
しっかり見てくれているのだと本当に嬉しく感じました。
在宅医療は今後も強く求められているということを感じ取れます。
算定できるようになった加算は、これから在宅医療に取り組む薬局にとっても、このようにすればいいんだという道標にもなるかと思います。
ぜひ、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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