在宅協力薬局制度はかつては在宅サポート薬局制度と呼ばれていましたが、令和2年度の診療報酬改定の際に名称が在宅協力薬局制度になりました。
1人薬剤師などで急な在宅対応が難しい場合に利用する制度です。
地域支援体制加算の要件として在宅が必須要件になっているので、やらなければならなくなっていますが、「夜間や休日に予定がある日もあるので全てには対応できない」、「1人薬剤師で外来が忙しい時間帯に在宅の急な依頼が入ってしまった」状況もありますよね。
地域支援体制加算の要件は令和6年度調剤報酬改定で外れてない?と思った方は以下の記事を参考にしてください。
そんなときに使いたいのが在宅協力薬局制度ですね。
今回はこの制度について紹介します。
在宅協力薬局とは
本来、居宅療養管理指導費や在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料などの訪問指導料は1つの保険薬局でしか算定できません。
ただし、例えば1人薬剤師の場合、「開局時間以外や緊急時に対応できないことがあるかもしれない」という不安から在宅訪問を躊躇してしまうケースがあると指摘され、その不安を解消するために作られた制度です。
概要
在宅協力薬局とは、訪問薬剤管理指導を主に行っている保険薬局(在宅基幹薬局)が連携する他の保険薬局のことです。
在宅協力薬局は、緊急その他やむを得ない事由がある場合に、在宅基幹薬局の薬剤師に代わって訪問薬剤管理指導を行うことができます。
図1
在宅協力薬局が処方箋を受け付け、調剤し、訪問薬剤管理指導を行った場合は、ほとんどの調剤技術料及び薬剤料等は在宅協力薬局で算定されます。
ただし、訪問指導料については在宅基幹薬局で請求することになります。
請求の流れは?
在宅協力薬局が対応した場合、それに関連する費用は患者に請求する必要があります。
そこについては在宅基幹薬局と在宅協力薬局で話し合い、在宅基幹薬局がまとめて集金するなど柔軟に対応することが良いのではないかと考えます。
ただし、訪問指導料は在宅基幹薬局で算定することになります。
同じ経営者のグループ薬局であれば、特に問題にはなりませんが、全く違うグループでは在宅協力薬局は代わりに対応だけ行って、訪問指導料が算定できないと損してしまうことになります。
そこについては (出来れば) 事前に代わりに対応した場合の代行手数料を支払うように取り決めて契約しておく必要があります。
金額は両社の合意で決めると思いますが、訪問指導料である居宅療養管理指導費、在宅患者訪問薬剤管理指導料、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料などの訪問指導料の点数が参考となるのではないかと考えます。
訪問指導料については以下の記事を参考にしてください。
要件
以下の要件を満たしている必要があります。
- 薬学的管理指導計画の内容を共有している
- 患者又は患者家族等の同意を得ている
薬学的管理指導計画については以下の記事を参考にしてください。
これらについては常時共有が可能であれば問題ありませんが、多くの場合は難しいと思います。
対応すべき場合にすぐに情報が共有できるようにしておく必要がありますね。
また、患者や家族からの同意を得ておく必要があります。
この点については介護保険であれば契約の際に重要事項説明書に記載し、説明しておきましょう。
重要事項説明書については以下の記事で様式のダウンロードも可能です。
在宅協力薬局制度は使われている?
在宅協力薬局制度についての調査報告は少なく、2つしか見つけられませんでした。
報告1
地域包括ケアシステムにおける薬剤師の在宅業務の在り方に関する調査研究事業-報告書- (令和2 (2020) 年3月)において在宅サポート薬局制度 (在宅協力薬局制度の旧称) について調査結果が掲載されていますので、その一部を紹介します。
まずは在宅協力薬局制度の活用状況から。
※地域包括ケアシステムにおける薬剤師の在宅業務の在り方に関する調査研究事業-報告書- (令和2 (2020) 年3月)
10%の薬局が活用しているようですが、広く活用されているとは言えない印象ですね。
さらに、提携先の薬局については、ほとんどが同一グループ内での連携となっており、異なる経営主体では約12% (12薬局) となっています。
続いて実際の依頼件数についての調査内容です。
期間が特定の1か月だったこともありますが、実際に在宅協力薬局制度を利用して対応する実例は限られているようです。
報告2
令和4年6月23日 第7回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 参考資料5
こちらの結果でも在宅協力薬局制度を活用しているのは10%であり、報告1とほぼ同じ結果です。
これらの調査結果より、在宅協力薬局制度は現状あまり活用されておりません。
まとめ
薬剤師数の少ない小規模薬局においては、規模の大きな薬局に比べて、在宅薬剤管理指導の負担が相対的に大きいです。
利用しているのも、ほとんどが同一グループ内が多く、小規模な薬局では活用できていないのが現状です。
ただ、本来であれば小規模な薬局こそ活用すべき制度であると考えます。
地域でうまく活用しているところもあると思いますが、そのような取り組みが全国的に広まってくれることが期待されます。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
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