在宅の知識

【薬局の在宅訪問】在宅患者訪問薬剤管理指導料と居宅療養管理指導費 -どっちを利用する?その違いは?-

医療保険と介護保険を利用する際の要件や点数が異なることがあるため、薬局薬剤師が患者宅を訪問する際にはどちらを利用するかが重要です。

 

この記事では、医療保険と介護保険の違いについて解説し、患者の状況に応じてどちらを利用するかを理解できるようにまとめています

 

以下の表には、対象患者や算定する指導料、点数、訪問範囲、報告書の送付義務、契約書の必要性、訪問回数などがまとめ、それぞれ個別に解説していきます

対象患者

看護師の場合、患者の状態や訪問回数等に応じて医療保険と介護保険を使い分けますが、薬局薬剤師の場合は非常にシンプルです。

 

介護認定なし ⇒ 医療保険

介護認定あり ⇒ 介護保険

 

これだけ覚えるだけで良いです。

初回に必ず介護認定を受けているか確認しましょう。

 

介護認定の有無は介護保険証を確認することで分かります。

以下ので囲まれた部分の区分表示が記載されていなければ、認定されていません。

稀に他のサービスを全く利用していないけど、介護認定は受けているとケースもあるので、高齢者で本人が認定ないと言っていても介護保険証を見せてもらう、家族に聞くなどキチンと確認しましょう。

 

介護保険申請中の場合には申請日に遡って介護認定が有効になるため、介護認定の結果を待って保険請求となり、月遅れで保険請求することもあります。

介護保険についてはまた別の記事で詳細を説明します。

算定する指導料と点数

医療保険:在宅患者訪問薬剤管理指導料

介護保険:居宅療養管理指導費もしくは介護予防居宅療養管理指導費

 

介護保険の場合、要支援認定であれば介護予防居宅療養管理指導費となりますが、内容は居宅療養管理指導費と全く同じものとなります。

 

この記事は保険薬局の薬剤師が在宅訪問するケースについて主に記載していますが、病院や診療所に勤務する薬剤師が訪問した場合でも算定することが出来ます。

 

医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料は指導料も同じですが、介護保険の居宅療養管理指導費は薬局と病院・診療所で点数が異なるので注意してください。

 

以下にそれぞれの点数について記載します。

単一建物居住者の考え方は別記事にて解説しているので、ご確認ください。

【薬局の在宅訪問】同一建物居住者人数の考え方を知ろう!ケースごとに詳細解説訪問指導料の算定では、同一建物居住者の人数によって点数が異なります。 しかしながら、その人数の数え方には特殊な例があることをご存知...

どちらにおいても医療用麻薬を使用中の患者においては100点 (単位) の加算があります。

訪問日の処方箋に医療用麻薬が処方されていなくても、過去の処方等により使用している場合であって、指導要件を満たしていれば加算することが出来ます。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【薬局の在宅訪問】麻薬管理指導加算を徹底理解!!タイガー薬剤師です。 専門分野と言っても過言ではない、在宅緩和領域! 在宅医療に関わっていくと必ずと言っていいほど、医療用麻薬が...

訪問範囲

訪問の範囲について医療保険と介護保険で異なります。

 

医療保険の場合、薬局から患家まで半径16km以内と規定されています。

この際、道なりではなく、直線距離となります。

 

一方、介護保険においては薬局と患家の距離について規定はありません

ただし、緊急時に迅速に対応できるように16km以内を目安としておくことをお勧めします。

書類関係

報告書

医療保険介護保険どちらにおいても訪問を指示した医師に対する報告書は必須となっています。

 

介護保険においては、それに加えてケアマネジャーへの報告書も義務付けられております。

 

その他、訪問看護師やデイサービスなど患者ごとに必要に応じて報告書送付するなどして、情報共有しておくことが重要です。

報告書の様式については規定はありません。

計画書

在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費 (介護予防居宅療養管理指導費) を算定するためには計画書を事前に策定しておくことが要件となっています。

 

計画書には対象となる疾患訪問予定日確認・指導すべき事項などを記載しておき、医師やケアマネジャーと共有しておきましょう。

 

また、計画書は月に1回以上の見直しが必要です。

 

計画書は定期訪問にかかる指導料の算定だけでなく、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定の際にも必要な考え方となってきますので、必ず作成しておきましょう。

計画書については以下の記事で紹介していますので、参考にしてください。

【薬局の在宅訪問】薬学的管理計画を徹底解説!様式ダウンロード可在宅訪問指導を行う際に指導料を算定する上で必須となっているのが薬学的管理指導計画 (以下、計画書) です。 この記事では計画書について...

契約書

介護保険では契約書および重要事項説明書に対する患者の同意が必要です。

 

重要事項説明書は契約書の内容を分かりやすく説明した文書であり、契約書に全て網羅されていれば不要ですが、現実的には契約書の文言は理解しづらいため作成する必要があります。

契約書・重要事項説明書については以下の記事にて詳細に解説しています。

【薬局の在宅訪問】契約書・重要事項説明書について徹底解説!様式のダウンロード可介護保険を用いた在宅訪問を行う上では契約書と重要事項説明書が必須となっています。 この記事では、なぜこれらの文書が必要か、どのように作...

一方、医療保険においては契約書等は求められておりません。

しかし、患者や家族とのトラブルを回避するためにも書面での説明をしておくことを推奨します。

訪問回数

訪問回数については医療保険介護保険違いはありません。

どちらも原則として月4回で中6日以上あけることとなっています。

 

中心静脈栄養治療法を受けている患者終末期がん患者ではこの限りではなく、月8回 (週2回まで) の算定が可能となっています。

 

訪問間隔があいていない場合や訪問回数が制限を超える場合は算定できなくなります。

指導料の算定の際には在宅患者緊急時訪問薬剤管理指導料の対象ではないか確認することも必要となってきます。

在宅患者緊急時訪問薬剤管理指導料については以下の記事を参考にしてください。

【薬局の在宅訪問】在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の算定方法を徹底解説!在宅医療の需要が高まり、薬局としても在宅医療に関わることが増えてきています。 しかしながら、外来とは異なり、在宅医療では算定する指導料...

まとめ

今回の記事では医療保険と介護保険の違いや患者ごとにどちらを利用するかについて解説しました。

・医療保険か介護保険のどちらを利用するかは介護認定の有無で決まる

・患者ごとに選ぶものではない

誤って請求すると返戻となってしまいますので、介護認定の有無はしっかりと確認しましょう。

まとめ資料を以下に掲載しておきます。

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