令和8年度(2026年度)の診療報酬改定では、在宅医療の「質」と「実効性」を問う非常に厳しい要件が医科側で導入されました。これは単にクリニックの収益が変わるだけでなく、薬局の在宅業務回数や経営にも直結するインパクトを秘めています。
今回の改定において、薬剤師が特におさえておくべき「医科」のポイントをまとめました
医師の訪問回数が「月2回から1回」へ減る可能性
今回の改定で最も注目すべきは、今回の改定で最も薬局への影響が大きいのが、「重症患者割合の実績要件」の導入です。
【在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料】
[施設基準]
(11) 在宅時医学総合管理料の注16(施設入居時等医学総合管理料の注5の規定により準用する場合を含む。)に規定する別に厚生労働大臣が定める基準当該保険医療機関の月二回以上訪問診療を行う患者数が一定数未満であること又は月二回以上訪問診療を行う患者数に占める別表第八の二若しくは別表第八の三に掲げる患者数が一定割合以上であること。
改定の内容
医師が「在宅時医学総合管理料(在医総管)」等で月2回以上の訪問診療の点数を算定する場合、難病や人工呼吸器、末期がん等の重症度の高い状態(別表第8の2等)の患者が一定割合以上いることが条件となりました。
要件を満たさない場合: 実際に月2回訪問していても、重症患者の割合が低い医療機関は、「月1回訪問」の低い点数しか算定できなくなります。
薬局への影響: 医療機関がこの減収を避けるため、比較的状態が安定している患者への訪問を「月2回から1回」へ絞り込む動きが予想されます。その結果、薬局の訪問薬剤管理指導の回数も減り、技術料や薬剤料の減少という経営的インパクトが生じる恐れがあります。
現時点では「一定割合」の詳細が明らかになっていませんが、注意していきたいですね。
医師との「同時訪問」が新たな評価軸に
- 医科:訪問診療薬剤師同時指導料(新設)
- 調剤:訪問薬剤管理医師同時指導料(新設)
医科:訪問診療薬剤師同時指導料(6月に1回) 300点
[対象患者]
当該保険医療機関において在宅時医学総合管理料を算定し、他の保険医療機関又は保険薬局において在宅患者訪問薬剤管理指導料又は居宅療養管理指導費(薬剤師が行う場合)を算定する患者
[算定要件]
(1) 訪問診療を実施している保険医療機関の保険医が、在宅での療養を行っている患者(施設入居時等医学総合管理料の対象患者を除く。)であって、通院が困難なものに対して、当該患者又はその家族等の同意を得て、当該患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を実施している他の保険医療機関若しくは保険薬局又は居宅療養管理指導を実施している病院、診療所若しくは保険薬局の薬剤師と同時に訪問を行うとともに、療養上必要な指導を行った場合に、6月に1回に限り算定する。
(2) 当該保険医療機関を退院した患者に対して退院の日から起算して1月以内に行った指導の費用は、第1章第2部第1節に掲げる入院基本料に含まれるものとする。
調剤側は別記事にて解説
これは、ポリファーマシー(多剤服用)対策や残薬対策を推進することが目的です。医師が薬剤師と一緒に訪問して指導を行うことで、その場での処方提案や減薬がスムーズに進むことが期待されています。6か月に1回算定可能です。
※調剤側は単一建物居住者1人の場合に限ります。
薬剤師の動き方として訪問の質を高め、医師に「同行してほしい」と思われるパートナーになることが、今後の在宅業務の安定につながります。
医師による「残薬確認」の義務化
在宅時医学総合管理料(在医総管)などの算定要件において、「診察時に患家の残薬状況を患者・家族から聴取し、適切な服薬管理を行うこと」が明確に義務付けられました。
【在宅時医学総合管理料・施設入居時等医学総合管理料】
[算定要件]
(31) 患家における残薬の状況を患者又はその家族から聴取し、その状況に応じて適切な服薬管理及び処方内容の調整を行うこと。また、担当医の指示を受けた看護職員等が情報の把握を行うことも可能であること。
医師側でも残薬の把握が必須となったため、今後は薬剤師による残薬整理や、それに基づく処方調整の提案がこれまで以上に歓迎され、評価される環境になります。
算定要件んとして「担当医の指示を受けた看護師等」となっておりますが、薬剤師が医師の訪問前に残薬状況を確認・報告しておくことの価値がこれまで以上に高まります。
緩和ケアの対象が「非がん疾患」へ大幅拡大
在宅での緩和ケアを支える評価の対象が、がん患者以外にも大きく広がりました。
対象拡大: 従来の「末期がん」「後天性免疫不全症候群(AIDS)」に加え、末期呼吸器疾患患者や、透析の中断等を選択した末期腎不全患者が在宅麻薬等注射指導管理料の対象となります。
【C108 在宅麻薬等注射指導管理料】
1 悪性腫瘍の場合 1,500点
2 筋萎縮性側索硬化症又は筋ジストロフィーの場合 1,500点
3 心不全、呼吸器疾患又は腎不全の場合 1,500点
これに伴い、心不全や呼吸器疾患の苦痛緩和(麻薬の注射管理など)への薬剤師の関与がより強く求められることが期待されます。
24時間体制の実効性
在宅療養支援診療所(在支診)において、自院で実際に往診体制を確保している時間などが評価の対象となります。これにより形式的な24時間往診体制ではNGとなります。
在宅療養支援診療所の施設基準 (一部抜粋)
当該在宅支援連携体制を構築する他の保険医療機関と協力して、患家の求めに応じて、24時間往診が可能な体制を確保し、往診担当医の氏名、担当日等を文書により患家に提供していること。また、当該保険医療機関において普段から訪問診療等を行う医師(往診担当日の前日又はそれ以前において当該保険医療機関の診療録を閲覧できる医師であって、必要に応じて往診の対象となる患者の診療方針等について訪問診療を行う医師と共有している、当該保険医療機関からの往診経験を10回以上有する往診担当医師を含む。)による、連続する24時間の往診体制等を月に4回以上確保していること。
ただし、基本診療料の施設基準等の別表第6の2に掲げる地域に所在する保険医療機関にあっては、看護師等といる患者に対して情報通信機器を用いた診療を行うことが24時間可能な体制を確保し、担当医及び担当看護師等の氏名、担当日等を文書により患家に提供している場合は、この限りでない。
(下線部が2026年度改定で追記)
背景
2040年に向けて在宅医療需要は急増し、85歳以上の増加に伴い在宅医療は62%増、救急搬送は75%増が見込まれています。(2026年2月時点) 地域での24時間対応体制の確保が不可欠となっています。
在宅療養支援診療所(在支診)には24時間連絡・往診体制が義務化されていますが、単独医師では維持が困難で、複数医療機関による「連携型」が増加しています。
令和8年度改定では、形だけの連携ではなく、実際の往診実績や対応時間など貢献度を評価されるようになります。ICTを活用した平時からの情報共有も重視されています。
近年、24時間体制を維持するために、夜間の電話受付を民間企業に委託したり、往診を非常勤医師(代行業者)に任せる事例が増えています。「誰が電話を受け、誰が往診に来るのか」について、患者への事前説明が不十分である懸念が指摘されました。
これを受け、往診を代行する医師は事前に常勤医と診療方針を共有している者に限るなど、責任の所在と透明性を高めるための規定が強化されます。
結論
制度改定の目的は、名目上の24時間体制ではなく、ICTと多職種連携を活用し、地域で実効性のある在宅医療体制を構築することにあります。
情報共有は「ICT」活用が前提に
「在宅医療情報連携加算」や「往診時医療情報連携加算」など、ICTを用いて多職種で情報を共有する体制への評価が重視されています。
ビデオ通話を用いたリアルタイムの連携(D to P with D)や、電子カルテ情報共有サービスの活用など、薬剤師もICTツールを使いこなして医師と繋がることが、算定や連携の鍵となります。
まとめ:これからの薬局薬剤師に求められること
医科側の改定内容を見ると、国は「医師と専門職がチームで重症患者や看取りを支える」体制を本気で作ろうとしていることが分かります。
薬局薬剤師としては、以下の3点を意識してアクションを起こしてみてはいかがでしょうか。
- 同時訪問の提案: 複雑な処方の患者さんに対し、医師に「同行訪問」を提案し、その場でポリファーマシー対策を行う。
- 残薬情報のフィードバック: 医師の義務化に合わせて、より詳細で具体的な残薬情報を文書で提供する。
- 非がん疾患の知識習得: 呼吸器や腎不全など、がん以外の緩和ケアにおける薬学的管理のスキルを高める。
医科側の改定ポイントを理解し、医師と同じ目線で在宅医療に参画することで、地域での薬局の存在感はさらに高まっていくはずです。
これからも、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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