介護施設には多くの種類があります。
特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅、高齢者グループホーム・・・など多くあり、それらの違いも難しいですよね。
薬剤師が訪問して在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費(以下、訪問指導料)を算定できる施設、できない施設があります。
訪問指導料の違いについては以下の記事で解説しています。
今回の記事では薬局が訪問可能(訪問指導料算定が可能)な施設について解説します。
算定可否の考え方
算定可否の基本的なルールです
医師・薬剤師の配置が義務付けられている施設は算定不可
たいていのことはこの考え方でOKです。
しかし、例外もあるので解説していきます。
施設の種類
今回の記事では以下の12種類について紹介します。
- 養護老人ホーム
- 特別養護老人ホーム (特養)(別名:介護老人福祉施設)
- 軽費老人ホーム (ケアハウス)
- 介護老人保健施設 (老健)
- 認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅
- 特定施設
- 介護医療院
- 身体障害者施設等
- 短期入所生活介護 (ショートステイ)
- (看護) 小規模多機能型居宅介護の宿泊サービス
出典:在宅医療における薬剤師業務について(中医協 総-4-4 2011.2.16)│ 厚生労働省、令和4年3月25日老老発0325第1号
①養護老人ホーム
根拠となる法律等:老人福祉法第20条の4
入所基準:自立した高齢者
医師・薬剤師の配置義務:医師
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可
居宅療養管理指導費:算定可
養護老人ホームは生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰させる施設です。
環境上の理由、経済的理由で困窮した高齢者が、自立した日常生活を送り、社会活動に参加できるようにするための施設です。
医師の配置義務があるため訪問指導料算定は出来ません。
②特別養護老人ホーム (特養)
根拠となる法律等:老人福祉法第20条の5 (介護保険法第8条)
入所基準:原則として要介護3以上
医師・薬剤師の配置義務:医師
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可 (末期の悪性腫瘍の患者のみ可)
居宅療養管理指導費:算定不可
特養は介護が必要な方に、介護サービスと生活の場を提供する公的な介護保険施設です。
費用が安く、24時間介護を受けられます。
さらに終身に渡り、入所できるメリットがありますが、入居までに順番待ちなど時間がかかります。
医師と薬剤師の配置義務があるため訪問指導料の算定は出来ません。
ただし、がん末期のみ医療保険で訪問指導が算定可能という例外があります。
また、服薬管理指導料でも特養入所者への訪問指導の点数は別に設定されています。
③軽費老人ホーム (ケアハウス)
根拠となる法律等:老人福祉法第20条の6
入所基準:原則60歳以上
医師・薬剤師の配置義務:A型のみ⇒医師、他⇒なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:A型⇒算定不可、他⇒算定可
居宅療養管理指導費:A型⇒算定不可、他⇒算定可
軽費老人ホーム (ケアハウス)は60歳以上の高齢者で、家族などの身寄りがなく、経済的に自宅での生活が困難な人が安価な費用で入居できる施設です。
A型、B型、ケアハウスの3種類があり、それぞれで対象者が異なります。
A型のみ医師の配置義務があるため訪問指導料は算定できません。
④介護老人保健施設 (老健)
根拠となる法律等:介護保険法第8条
入所基準:65歳以上で要介護1以上
医師・薬剤師の配置義務:医師・薬剤師
院外処方せん発行:不可 (老健施設の医師ではない保険医療機関の保険医が抗悪性腫瘍剤等を投与する場合は処方箋交付可)
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可
居宅療養管理指導費:算定不可
老健は介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すことを目的とした施設です。
医師による医学的管理の下、看護・介護、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供します。
院外処方せん発行は不可であり、薬剤師の配置義務もあることから、訪問指導料の算定は出来ません。
⑤認知症対応型共同生活介護 (グループホーム)
根拠となる法律等:老人福祉法第5条の2、介護保険法第8条
入所基準:認知症の症状がある・65歳以上・要支援2または要介護1以上
医師・薬剤師の配置義務:なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可
居宅療養管理指導費:算定可
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは、認知症の人だけのケア付き住宅で、認知症のある要介護者がもっている能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにする目的で提供されるサービスです。
1つの共同生活住居に5人~9人の少人数の利用者が、介護スタッフとともに共同生活を送ります。
要介護者を対象としているため居宅療養管理指導費のみ算定可能な施設となっています。
また、同一建物居住者の考え方が少し特殊なケースなので以下の記事も参考にしてください。
⑥有料老人ホーム
根拠となる法律等:老人福祉法第29条
入所基準:原則65歳以上 (他の要件は施設の種類による)
医師・薬剤師の配置義務:なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定可
居宅療養管理指導費:算定可
有料老人ホームは、 高齢者が心身の健康を維持しながら生活できるように配慮された「住まい」です。
公的施設や民間運営の施設があり、費用によっては様々です。
費用が高いところもありますが、すぐに入居することが出来ることから件数は増え続けています。
医師や薬剤師の配置義務もないため、訪問指導料の算定は医療・介護共に可能です。
⑦サービス付き高齢者向け住宅
根拠となる法律等:高齢者の居住の安定を確保する法律第5条
入所基準:60歳以上の高齢者 or 60歳未満で要介護認定
医師・薬剤師の配置義務:なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定可
居宅療養管理指導費:算定可
サービス付き高齢者向け住宅は「サ高住」や「サ付き住宅」などと呼ばれ、高齢者が自宅のように自由に暮らしながら、スタッフによる安否確認や生活相談などのサービスを受けられる賃貸住宅です。
高齢者の居住の安定を確保することを目的として、2011年に国土交通省と厚生労働省が共同で制度化されてから急速に増加しています。
医師や薬剤師の配置義務もないため、訪問指導料の算定は医療・介護共に可能です。
⑧特定施設
根拠となる法律等:介護保険法第8条
入所基準:
医師・薬剤師の配置義務:なし (※医師が配置している施設もある)
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可 (要介護者を対象としている施設のため)
居宅療養管理指導費:算定可
特定施設は介護保険法に基づき、要介護や要支援の入居者に対して、一定のサービスや基準を満たした介護施設のことです。
有料老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅が指定されます。
ケアマネージャーが作成したケアプランに基づき、食事介助や入浴介助、排泄介助などのほか、生活全般にかかわる身体的介護サービスと、機能回復のためのリハビリテーションを受けられる厚生労働省令が定めた施設です。
養護老人ホームやケアハウスで医師が配置されている場合は訪問指導料は算定できません。
医師・薬剤師の配置がない施設であれば居宅療養管理指導費が算定可能です。
(介護保険を前提としたサービスのため)
⑨介護医療院
根拠となる法律等:介護保険法第8条
入所基準:「要介護1~5」の認定
医師・薬剤師の配置義務:医師・薬剤師
院外処方せん発行:不可 (例外あり)
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可
居宅療養管理指導費:算定不可
介護医療院は要介護高齢者の長期療養・生活のための施設です。
要介護者であって、主として長期にわたり療養が必要である者に対し、施設サービス計画に基づいて、療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護および機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことを目的としています。
医師・薬剤師の配置が義務付けられているため、訪問指導料は算定出来ません。
⑩身体障害者施設等
根拠となる法律等:社会福祉法・障害者総合支援法 等
入所基準:施設による
医師・薬剤師の配置義務:-
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定可 (医師が配置されている場合不可)
居宅療養管理指導費:算定可 (医師が配置されている場合不可)
障害者施設等でまとめてしまいましたが、具体的には障害者共同生活援助 (障害者グループホーム) などが該当します。
訪問指導料については医師・薬剤師の配置がされていない施設であれば算定可能です。
⑪短期入所生活介護 (ショートステイ)
根拠となる法律等:介護保険法第8条
入所基準:「要支援1~2」「要介護1~5」認定、自宅と施設が同一市町村
医師・薬剤師の配置義務:なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可 (要介護者を対象)
居宅療養管理指導費:算定不可
ショートステイとは、自宅での介護が一定期間できなくなった際に、その期間だけ被介護者が老人ホームや介護施設に入所するサービスです。
ショートステイでは訪問指導料は算定出来ません。
介護保険が前提なので居宅療養管理指導が対象となりますが、ショートステイ利用時には訪問系のサービスは算定できないこととなっています。
また、居宅療養管理指導は居宅で行うという観点からも算定はできません。
⑫(看護) 小規模多機能型居宅介護
根拠となる法律等:介護保険法第8条
入所基準:「要支援1~2」「要介護1~5」認定、自宅と施設が同一市町村
医師・薬剤師の配置義務:なし
院外処方せん発行:可
在宅患者訪問薬剤管理指導料:算定不可 (要介護者を対象)
居宅療養管理指導費:算定可
小規模多機能型居宅介護とは、中重度の要介護者となっても、在宅での生活が継続できるように支援する、小規模な居住系サービスの施設です。デイサービスを中心に訪問介護やショートステイを組み合わせ、在宅での生活の支援や、機能訓練を行うサービスです。
特徴としては1つの事業者と契約するだけで、「通い(デイサービス)」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問(訪問介護)」や「泊まり(ショートステイ)」のサービスを、組み合わせて利用できます。
施設によっては訪問看護師のサービスも付随した看護小規模多機能型居宅介護もあります。
料金はどのサービスを利用しても1か月で固定となります。
この「泊まりサービス」はショートステイと同じように捉えらますが、こちらでは居宅療養管理指導費の算定は可能です。
小規模多機能型居宅介護の「泊まりサービス」は居宅とみなされます。
算定可否一覧
まとめ
今回の記事では施設ごとでの算定可否について解説しました。
ポイントは医師・薬剤師の配置があるかどうかとなりますが、一部例外もあるのでおさえておきましょう。
特に在宅医療においてはショートステイ中の居宅療養管理指導は不可であることは重要なのでおさえておきましょう。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
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