在宅緩和ケアにおいて、痛みを効果的にコントロールするために必要不可欠なのが
PCAポンプです。
PCAとはPatient Controlled Analgesiaの略称で、「自己調節鎮痛法」 の意味です。
PCAポンプ全般については以下の記事をご覧ください。
薬局から医療機関にPCAポンプを貸し出すこともあります。
今回は、PCAの中でも近年特に注目を集めている「クーデックエイミーPCAポンプ」について、徹底解説します。
特徴やメリット、注意点などを詳しく解説するので、是非最後までお読みください。
使用方法については以下の記事で詳細に解説しています。
クーデックエイミーPCAポンプの概要
クーデックエイミーPCAポンプは機械式でなおかつディスポーザブルのPCAポンプです。
ポンプの概要として以下のメリットとデメリットに分けて解説していきます。
メリット
- コスト
- 小型であること
- 使用時間の記録ができる
コスト
まずコストについては導入する際の金額がCADD Legacy PCAポンプに比べると半分以下となります。
さらに後述する医科診療報酬上での加算が高いことが一番の特徴だと考えます。
たくさん薬液バッグ (MPユニット) を使用したとしても (逆ザヤではあるけど) 保険請求できることも嬉しいポイントです。
※診療報酬(医科)の項目参照
小型であること
本体や薬液バッグが小さくて軽量なので患者のQOL向上にもつながります。
PCAボタンもワイヤレスであることも動き回りやすさにつながっています。
これは設定するためのスマートフォンや充電器がバラバラになっていることで実現されています。
使用時間の記録ができる
本体にはPCAボタンを使用した時間とそれが有効だったのか無効だったのか記録されます。
使用回数や有効回数を記録する機能は他のポンプでも備わっていましたが、使用時間まで記録されるのは珍しいです。
どの時間帯に多く使用しているのかを確認することで、適切な疼痛評価に繋がります。
他の機能としてプログラミング投与というものがあり、時間帯によって投与量を変えることも出来るので組み合わせて使用すると患者個別に投与設計することが出来ます。
デメリット
もちろんデメリットもあります。
- 安全管理上の問題
- 対応できる医療機関が少ない
- MPユニットが逆ザヤ
- 部品が多い
安全管理上の問題
PCAポンプの要件として「薬液が容易に取り出せない構造」であることがあります。
薬液バッグ (MPユニット) はシリンジを用いて薬液を出し入れすることになります。
シリンジがないと取り出せないので「容易には取り出せない構造」となるようです。
心配な場合は鍵付きのケースもオプションで販売されているので、ご確認ください。
対応できる医療機関が少ない
2021年に販売されたため、普及はこれからです。
普及されれば解消されるデメリットですね。
薬局がポンプを貸し出す場合、在宅医療を担う医療機関に使い方や特徴の説明を行う必要があります。
また、在宅医療においては訪問看護師さんが使えないととても困るので、訪問看護ステーションに対しても事前に使い方について説明しておくことは非常に重要です。
入院中の医療機関においても導入されている所は少ないので、退院支援として使用する場合には入院中の医療機関スタッフに対しても使用方法の説明をする必要が出てきます。
CADD Legacy PCAポンプの方が一般的に使用されているので、退院時にはそちらを使用して、退院後にクーデックエイミーPCAポンプに切り替えるケースもあります。
MPユニットが逆ザヤ
薬液バッグであるMPユニットは保険請求金額が3,240円であるのに対して納入価格は3,500~4,000円程度となり、逆ザヤとなってしまいます。
ただし、診療報酬 (医科) の項目で述べますが、携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算を算定する場合、保険請求できるMPユニットは7個目以降になります。
1ヶ月のうち6個以内になるように処方設計することが重要です。
CADD Legacy PCAポンプではカセットは請求できないので、逆ザヤであったとしてもクーデックエイミーは請求できる点において優れています。
部品が多い
メリットでもあった小型という点ですが、部品が多いというデメリットにもなります。
本体 (ドライブユニット) 、PCAボタン、コムタッチ、MPユニット、スマートフォン、エイミーズホーム (充電器) でセットとなっており、全てバラバラになります。
各部品の説明は後述しますが、常につけておくものや必要時に使用するものとそれぞれで異なります。
ポンプの使用終了時に回収することになりますが、全ての部品を忘れずに回収できるようにリストを同梱しておくと良いでしょう。
また、全ての部品が入るようなケースは付属していないので、100円ショップなどで購入しましょう。
メリット・デメリットまとめ
上記のようにメリットとデメリットがありますが、それらを総合的に考えてもメリットの方が大きいと考えます。
デメリットの多くは工夫や対応次第で、対処可能です。
診療報酬 (医科)
ここが機械式のCADD Legacy PCAポンプとの差別化の重要ポイントです。
医科の診療報酬の内容になりますが、ポンプを貸し出しする事業所・薬局はポイントだけでもおさえておきましょう。
クーデックエイミーPCAポンプを癌性疼痛のコントロール目的で使用した時に医科で算定できる指導料は以下になります。
在宅療養管理指導料
C108 在宅悪性腫瘍等患者指導管理料(1月につき)1500点
C166 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算(1月につき)2500点
※1月につきユニット7個目以降は特定保険医療材料として算定する。
つまりMPユニット6個目までは加算に含まれております。
これに対してCADD Legacy PCAポンプでは以下のようになります。
在宅療養管理指導料
C108 在宅悪性腫瘍等患者指導管理料(1月につき)1500点
C161 注入ポンプ加算(1月につき)1250点
注入ポンプ加算の点数が半分となり、ユニットにあたるメディケーションカセットはいくつ使用しても保険請求できません。
クーデックエイミーPCAポンプではユニットが請求できることが画期的です。
クーデックエイミーPCAポンプも機械式なのに、なぜディスポーザブルなのか?
それはMPユニットに超小型マイクロポンプが搭載されているからです!
後ほど紹介します。
CADD Legacy PCAポンプもしくはクーデックエイミーPCAポンプを使用した場合の収支について比較シミュレーションしてみます。
どちらも仮にポンプは10,000円/月でレンタルし、ユニット (カセット) は3,500円/個として、1か月で4回交換したケースで考えてみます。
CADD Legacy PCAポンプの場合
【収入】
27,500円 (在宅悪性腫瘍等患者指導管理料1500点+注入ポンプ加算1250点)
【支出】
24,000円 (レンタル費用10,000円+カセット代14,000円 (3,500円×4))
【合計】+3,500円
クーデックエイミーPCAポンプの場合
40,000円 (在宅悪性腫瘍等患者指導管理料1500点+携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算2500点)
【支出】
24,000円 (レンタル費用10,000円+ユニット代14,000円 (3,500円×4))
【合計】+16,000円
となり、10,000円以上の差が発生します。
実際にはレンタル費用やカセット (ユニット) の金額や交換回数で変わってきますが、金額についてはクーデックエイミーPCAポンプに軍配が上がります。
さらに高カロリー輸液投与により輸液ポンプも使用していた場合、CADD Legacy PCAポンプではポンプ注入加算はどちらか1台分しか請求出来ません (地域による) が、クーデックエイミーPCAポンプの場合だと輸液ポンプでポンプ注入加算算定し、クーデックエイミーPCAポンプで携帯型ディスポーザブル注入ポンプ加算を算定できます。
上記の診療報酬については複雑になるので別記事にて詳しく解説しています。
医療機関がクーデックエイミーPCAポンプを導入することは経営的なメリットが大きいことが要因となりそうです。
薬局としては積極的に営業するポイントにもなりますね。
各部品の説明
ドライブユニット (本体)
6時間充電で約4日稼働できます。
ポンプユニットをこのドライブユニットに接続して使用します。
※カバーの色はたくさん種類があるので複数所有する場合には使い分けた方が視覚的にも分かりやすいです。
PCAボタン
ワイヤレスであることが特徴。
Bluetoothでつながっているため本体と2m離れても使用可能です。
本体と1:1であるため別の本体とは使えない。
内臓電池であるが切れる心配はない(メーカーより確認)
ワイヤレスであるが故に、回収時忘れがちなので要注意。
コムタッチ
スマホと本体の接続に使用します。
コムタッチを使わないと本体の起動や設定などは出来ません。
本体との接続部は裏表あるので要注意!
MPユニット
容量:50mL、100mL、300mL、スパイクがある。
10個単位での納入になる (ことが多い) ためまずは100mLのみあれば対応可能です。
超小型マイクロポンプ搭載されています。
ポンプが使い捨てであるユニットに付属していることでディスポーザブルポンプとなっています。
考え方が画期的だと感じました。
ルートは患者側に1.5mLあり、延長チューブは不要。だがつけておいた方がユニット交換時に便利
特定保険医療材料として請求可能。3,240円
納入価は1ユニットあたり3,500~4,000円するので処方箋で出ることになると逆ザヤとなる。
1か月に6個以内になるように処方提案するなど働きかけましょう。
エイミーズホーム (充電器)
この上にドライブユニット (本体) を置くだけで充電できます。
ただし固定はされていないので心配な場合はバンドなどで止めておくことをオススメします。
スマートフォン
Android・USB TYPE-Cのものであれば対応可
これは別で購入した方が安く済みます!
アプリケーション (エイミーズウィンドウ) を入れることで使用可能となります。
注意点として通信機能はありません。
⇒本体とスマホはコムタッチで接続が必要であり、外部との通信機能はないので使用記録を遠隔で確認することは出来ません。
他のポンプとの比較
VS CADD Legacy PCAポンプ
VS 従来のディスポーザブルPCAポンプ
まとめ
今回はクーデックエイミーPCAポンプについて解説しました。
これからどんどん広まっていくと予想されるので、どのようなものか理解しておくと良いでしょう。
使い方については以下の記事を参考にしてください。
PCAポンプについては以下の書籍で勉強するのがおススメです!
これからPCAポンプを導入するならクーデックエイミーPCAポンプが第一選択!!
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
ダウンロードして皆様の薬局でご活用ください。
𝕏(旧:Twitter)やInstagramでも在宅医療に関する情報発信しています。
LINE公式アカウント登録して頂くと、必要な記事を簡単に検索できます!
使い方はこちら↓