「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」について解説します。
※令和6年度調剤報酬改定(令和6年6月1日施行)の内容を含みます。現行のものではないので注意してください。
少し細かいところですが、外来では重複投薬・相互作用等防止加算ですね。
加算ではなく、薬学管理料なので、居宅療養管理指導費でも算定できます。
令和6年度調剤報酬改定で大きく変更になり、外来とは異なるケースで算定できるようになりました。
それが「処方箋発行前の提案が採用された場合」です。
今回の記事では令和6年度調剤報酬改定において変更された内容について解説します。
概要
【1】処方箋受付”後”に疑義照会にて変更
- イ「残薬調整に係るもの以外」 40点
- ロ「残薬調整に係るもの」 20点
【2】処方箋発行”前”に提案し、採用された処方箋を受付
- イ「残薬調整に係るもの以外」 40点
- ロ「残薬調整に係るもの」 20点
【1】は改定前の管理料として、そのまま残っています。
在宅だと残薬の確認も自宅で行うことがあったり、多職種と連携することで算定する機会が多くなります。
今回の改定で特に注目すべきなのは【2】です!
処方箋発行前に提案し、採用された場合でも算定出来るようになります。
算定要件
注1 区分番号15に掲げる在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者その他厚生労働大臣が定める患者に対して、薬剤服用歴に基づき、重複投薬、相互作用の防止等の目的で、処方医に対して処方箋の処方内容に係る照会又は患者へ処方箋を交付する前に処方内容に係る提案を行った結果、処方に変更が行われた場合に、処方箋受付1回につき所定点数を算定する。
2 区分番号10の2に掲げる調剤管理料の注3に規定する重複投薬・相互作用等防止加算、区分番号10の3に掲げる服薬管理指導料、区分番号13の2に掲げるかかりつけ薬剤師指導料又は区分番号13の3に掲げるかかりつけ薬剤師包括管理料を算定している患者については、算定しない。
(1) 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は、薬剤服用歴等又は患者及びその家族等からの情報等に基づき、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合に算定する。ただし、複数項目に該当した場合であっても、重複して算定することはできない。
(2) 受け付けた処方箋の処方内容について処方医に対して連絡・確認を行い、処方に変更が行われた場合には「1」を算定し、処方箋の交付前に処方しようとする医師へ処方に係る提案を行い、当該提案に基づく処方内容の処方箋を受け付けた場合には「2」を算定する。
(3) 「1」のイ及び「2」のイにおける「残薬調整に係るもの以外の場合」とは、次に掲げる内容である。
ア 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
イ 併用薬、飲食物等との相互作用
ウ そのほか薬学的観点から必要と認める事項
(4) 「残薬調整に係るものの場合」は、残薬に関し、受け付けた処方箋について処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更が行われた場合には「1」の「ロ」を算定し、処方箋の交付前に処方医への残薬に関連する処方に係る提案を行い、当該提案が反映された処方箋を受け付けた場合には「2」の「ロ」を算定する。
なお、当該加算を算定する場合においては、残薬が生じる理由を分析するとともに、必要に応じてその理由を処方医に情報提供すること。
(5) 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の対象となる事項について、受け付けた処方箋に基づき実施した場合は、処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴等に記載する。
(6) 在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料の対象となる事項について、患者へ処方箋を交付する前に処方内容に係る提案を実施した場合は、処方箋の交付前に行った処方医への処方提案の内容(具体的な処方変更の内容、提案に至るまでに検討した薬学的内容及び理由等)の要点及び実施日時を薬剤服用歴等に記載する。この場合において、医療従事者間のICTを活用した服薬状況等の情報共有等により対応した場合には、処方提案等の行為を行った日時が記録され、必要に応じてこれらの内容を随時確認できることが望ましい。
(7) 同時に複数の処方箋を受け付け、複数の処方箋について薬剤を変更した場合であっても、1回に限り算定する。
文書の有無は要件にはなく、診察同行や情報共有システムなどでも OKなのは特に素晴らしいと思います。
在宅医療ではMCS (Medical Care Station) などのコミュニケーションツールが活用されていることを理解してくれています。
もちろん要件として薬歴に提案した内容や日時を記載する必要があります。
ただし、同時に「残薬調整に係るもの」と「残薬調整に係るもの以外」を提案していたり、処方前と処方後に2回行ったとしても1回しか算定できません。
事前に残薬確認して提案している、診察同行して提案しているなど、在宅医療で薬剤師がしていたことがしっかりと評価された嬉しい改定です。
これからは事前に残薬の確認や、処方提案を行うことが更に積極的に行われるようになることを期待しています。
ただし、H24調剤報酬Q&Aにおいて外来の重複投薬・相互作用防止加算において「残薬の状況確認に伴う処方変更は頻繁に発生するものではない、毎回取るような方は服薬支援を変える必要がある」と記載があることから、毎回算定することの可否については避けた方が良いかもしれません。
【重複投薬・相互作用防止加算】
(問1) 通常、同一医療機関・同一診療科の処方せんによる場合は重複投薬・相互作用防止加算を算定出来ないが、薬剤服用歴管理指導料の新たな要件として追加された「残薬の状況の確認」に伴い、残薬が相当程度認められて処方医への照会により処方変更(投与日数の短縮)が行われた場合に限り、同加算の「処方に変更が行われた場合」を算定できるものと解釈して差し支えないか。
(答) 差し支えない。ただし、残薬の状況確認に伴う処方変更は、頻回に発生するものではないことに留意する必要がある。
ロ「残薬調整に係るもの以外」
該当するもの
「残薬調整に係るもの以外」は以下のようなものが該当すると記載されています。
- 併用薬との重複投薬
- 併用薬、飲食物との相互作用
- その他、薬学的観点から必要と認めるもの
さらにそのうち、「薬学的観点」については重複投薬・相互作用等防止加算についての疑義解釈が出ております。
薬学的観点(H28調剤報酬Q&A)
- 過去の副作用、アレルギー等情報に基づく疑義照会⇒おくすり手帳からの確認や事前の薬歴明記が必要
- 同一医療機関などからの処方箋に基づく疑義照会によるもの
- 年齢や腎機能などを踏まえた投与量の変更などの疑義照会によるもの
- 服薬困難による剤形変更のための疑義照会によるもの
レセプト摘要欄への記載事項
「ロ 残薬調整に係るもの以外」を算定する場合は外来の重複投薬・相互作用等防止加算と同様にレセプト摘要欄への記載は必要です。
処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を記載
「同種・同効の併用薬との重複投薬」、「併用薬・飲食物等との相互作用」などと記載しましょう。
また、「その他、薬学的観点から必要と認めること」の場合は具体的に記載しましょう。
薬歴への記載内容
薬歴への記載内容は【1】と【2】、イとロでそれぞれ決められているので個別にまとめます。
【1】イ 処方箋受付後「残薬調整に係るもの以外」
- 処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容
- 「薬学的観点」である場合は、変更に関する根拠
【1】ロ 処方箋受付後「残薬調整に係るもの」
- 処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容
- 残薬が生じる理由を分析した内容
【2】イ 処方箋発行前「残薬調整に係るもの以外」
- 処方提案の内容(具体的な処方変更の内容、提案に至るまでに検討した薬学的内容及び理由等)の要点
- 提案の実施日時
- (ICTを活用した場合は画面のスクリーンショットなどを添付しておくと良いかも)
- 「薬学的観点」である場合は、変更に関する根拠
【2】ロ 処方箋発行前「残薬調整に係るもの」
- 処方提案の内容(具体的な処方変更の内容、提案に至るまでに検討した薬学的内容及び理由等)の要点
- 提案の実施日時
- (ICTを活用した場合は画面のスクリーンショットなどを添付しておくと良いかも)
- 残薬が生じる理由を分析した内容
まとめ
今回の記事では「在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料」の令和6年度調剤報酬改定内容について解説しました。
事前の処方提案に対して評価されたことは、これまで取り組んでいた薬局にとっても、これから取り組もうとする薬局にとっても嬉しい改定です。
処方医としても事前に処方提案する方が疑義照会で連絡するよりも、診察時に考えることが可能なので助かるのではないかと考えます。
ぜひ、これからも更に積極的に提案していきましょう。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
ダウンロードして皆様の薬局でご活用ください。
その他にも令和6年度調剤報酬改定では在宅医療に関連して多くの評価がついています。
これからも、在宅医療に取り組む薬剤師にとって有意義な情報を届けていこうと思います。
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