介護保険を用いた在宅訪問を行う上では契約書と重要事項説明書が必須となっています。
この記事では、なぜこれらの文書が必要か、どのように作成・説明されるのか、そして契約書の説明時に留意すべきポイントと重要事項説明書との関連について詳しく説明いたします。
ひな形の無料ダウンロードも可能なので、ぜひ最後まで読んでください。
居宅療養管理指導を行う際に必要な書類
まずはじめに居宅療養管理指導を行う際に必要な書類を確認します。
- 契約書
- 重要事項説明書
- 個人情報使用同意書
※重要事項説明書と個人情報使用同意書は併せて作成することが可能です。
介護保険のサービスは、原則的に「契約」に基づいて提供されます。
介護保険サービス全般において、サービスの提供は措置ではなく、双方の合意がなければ利用できないことが基本です。
そのため、すべてのサービスにおいては契約書の作成、説明、そして双方の合意が事前に必要です。
介護保険でのサービスを受けるには、事前に契約が必要です。
このため、事業を提供する際には、重要事項説明書と介護保険利用契約書を説明し、合意を取る必要があります。
これらの文書に署名・捺印しなければ、利用を開始することはできません。
介護保険制度は、利用者と提供事業所の双方の保護と信頼を築くために、この仕組みを採用しています。
一方で、医療保険の在宅患者訪問薬剤管理指導料においては、契約書の記載が直接的に規定されているわけではありません。
しかし、患者の権益を守り、過剰なサービス提供や架空請求、トラブルを防ぐために、文書による説明を推奨しています。
これにより、利用者が提供されるサービスについて明確な理解を得ることができ、不利益を回避できます。
医療保険と介護保険の違いなどについては以下の記事も参考にしてください。
契約書と重要事項説明書については必ず2部ずつ作成し、利用者 (患者) と事業所 (薬局) で1部ずつ保管しましょう。
契約書と重要事項説明書の関係
疑問に思うのが契約書と重要事項説明書は両方必要なのか?という点です。
結論としては「両方必要」です。
契約書にサービス内容の詳細をすべて記載すると、理解が難しくなることがあります。
そのため、契約書には簡潔に記入し、詳細な情報は重要事項説明書に記載する方法や、契約書に「別紙サービス内容説明書記載のサービスを提供する」と記載し、サービス内容説明書を添付するなどのアプローチも考えられます。
これにより、契約書がわかりやすくなります。
一方で、重要事項説明書は契約書の要点を簡潔な言葉で説明するための文書であり、サービス提供に契約が必要であることや契約の説明に役立つ役割を果たします。
したがって、両方の文書が必要であり、契約書と重要事項説明書は補完的な役割を果たすものと考えられます。
契約書と重要事項説明書の関係と役割分担は以下の通りです。
契約書・・・基本的な契約条件を示し、簡潔に記載
重要事項説明書・・・詳細な情報を提供し、利用者が完全に理解できるようにする
続けてそれぞれの重要性や記載内容について掘り下げていきます。
契約書
契約書は介護保険制度における基本的な契約原則を表す文書であり、その内容と役割は極めて重要です。
契約書にはどのようなことが記載されているのか見ていきます。
今回はダウンロード可能なひな形を用いて紹介しますが、必ず自分の薬局で使用している様式に何が記載されているのか確認しましょう。
契約書の記載内容
第1条(目的)
この契約及び介護サービスの目的について記載されています。
利用者が出来る限り自立した生活を送るための支援を行います。
第2条(契約期間)
契約期間は、ひな形では空欄になっているので契約時に記載することになります。
年度末にしたり、要介護認定の有効期間としておくのが良いでしょう。
契約解除の申し出がない際は要介護認定の更新に伴い自動更新となる旨を伝えておきましょう。
更新後は要介護認定の有効期間と同じになります。
第3条、第4条(運営規程の概要)
規程の概要や従業員の勤務体制について記載されていますが、詳細については重要事項説明書での説明としています。
第5条(主治医との関係)
居宅療養管理指導は主治医による指示のもと、密接な連携を取りながらサービスを提供することを規定しています。
第6条(居宅療養管理指導サービスの内容及びその提供)
居宅療養管理指導を実施して、報酬についてはケアマネジャーが作成する介護計画書に記載することで利用者(患者)が確認できるようにすることとされています。
従って、介護計画書(ケアプラン)には居宅療養管理指導についての予定日などを入れ込んでもらうことが必要です。
第7条(居宅介護支援事業者等との連携)
他の介護サービスを提供する事業所と連携することが記載されています。
第8条(協力義務)
利用者(患者)も可能な限り薬局の訪問サービスについて協力してもらうことを定めています。
第9条(苦情対応)
苦情対応の窓口を定めるように規定されており、苦情による不利益がないことが記載されています。
第10条(費用)
居宅療養管理指導の単位について記載されていますが、詳細については重要事項説明書にて記載するとされています。
また、利用単位の変更については1か月前までに文書により通知し、変更の申し出を行うことを定めています。
第11条(利用者負担額の滞納)
利用者負担額を滞納した場合には契約の解除することがあるということを定めています。
第12条(秘密保持)
事業所(薬局)は知りえた秘密については漏えいしないことを規定しています。
後述する個人情報保護に関する文言となっているので、個人情報利用同意書を別途取得することを省略することが出来ます。
第13条(甲の解除権)、第14条(乙の解除権)
甲(患者側)と乙(薬局側)の解除権について記載されています。
第15条(契約の終了)
契約の終了について定めています。
要介護認定を受けられなくなった場合や第13・14条に該当する場合などがあります。
契約書の様式によっては老健への入所や医療機関に入院した場合も解除となっているので、ご注意ください。
第16条(損害賠償)
事業所(薬局)がサービスの提供にあたって発生した損害の賠償について定められています。
第17条(利用者代理人)
契約について代理人を専任して行うことが可能であることを記載しています。
第18条(合意管轄)
訴訟が発生した場合の裁判所を規定しています。
薬局の所在地に応じた管轄にしておきましょう。
第19条(協議事項)
契約書に記載がない項目について協議しましょうと記載されています。
契約書の説明時のポイント
契約書の説明においては、以下のポイントに留意することが重要です。
- 契約書の内容をわかりやすく説明し、利用者が理解しやすくなるよう心がける
- 利用者やその家族からの疑問や質問に対して、丁寧かつ的確に回答する
- 契約書に署名や捺印をする前に、利用者が内容に納得し、理解したことを確認する
契約書の内容を把握し、理解しておきましょう。
重要事項説明書
重要事項説明書の役割
重要事項説明書は、契約書の内容を補完し、利用者にとって重要な情報を提供する役割があります。具体的な役割と内容の例は以下の通りです。
- サービス提供事業所の運営規定や勤務体制の概要
- 利用者負担に関する情報を明示
- その他、利用者が選択に役立つ情報を提供
重要事項説明書の記載内容
重要事項説明書には、具体的な情報が含まれます。以下はその主な内容です。
- サービス提供事業所の運営規定に基づく運用方針や勤務体制の説明。
- 利用者負担に関する情報、例えば料金体系や支払い方法。
- その他の利用者がサービスを受ける上で知っておくべき重要事項。
重要事項説明書についても項目ごとに何が記載されていくのか確認していきましょう。
1.事業者概要
まずは事業所 (薬局) の概要となります。
所在地や指定番号など、間違えてないか今一度確認しましょう。
2.事業の目的と運営方針
事業の目的と運営方針では契約書に記載しきれていない部分についても説明されています。
3.提供するサービス
提供する介護保険によるサービスについて記載しています。
薬局の場合は居宅療養管理指導サービスのみです。
4.職員等の体制
職員の職種とそれぞれの人数や勤務体制について記載しています。
薬局によってはここに担当者名を記載することもあります。
5.担当薬剤師
メインで担当する薬剤師を主担当として、他の担当者についても記載します。
また、在宅協力薬局制度により連携している薬局についても、この項目で一緒に記載しています。
在宅協力薬局制度については今後、記事で紹介します。
6.営業日時
薬局の営業日と営業時間を記載しています。
実際に説明する際には、営業時間外であっても対応はすることを伝えて次の項目の説明にうつると良いでしょう。
7.緊急時の対応等
緊急時の対応について記載しています。
営業時間外であっても対応可能であること、また緊急時の連絡先もここに記載するようにしましょう。
8.利用料
患者や家族にとっては、この項目が一番気になる場合が多いです。
点数についても理解しておきましょう。
特に施設患者の場合、人数によって点数が異なるため、どの分類になるのかをしっかり把握しておきましょう。
施設の人数については以下の記事で説明しています。
また、麻薬管理指導加算では100単位追加となることも説明しておきましょう。
以下の記事でも紹介しています。
さらに特定の地域においては追加で加算される点数があるので、自分の地域が該当しているか確認しましょう。
9.苦情申立窓口
サービス提供にあたり苦情があった際の連絡先になります。
可能であれば訪問を担当する薬剤師とは異なる方が良いです。
個人情報保護に関する同意書
在宅医療の現場では多職種間での情報共有が必須となるので、「個人情報利用同意書」を取り交わしておく必要があります。
今回紹介していてるひな形には契約書の第12条(秘密保持)の項目に記載されており、重要事項説明書の同意署名欄下部に個人情報保護に関する同意欄を設けてあります。
これをもって個人情報利用に関しての説明、同意を満たせています。
重要事項説明書の同意欄の記載漏れに注意してください。
製本と割印
契約書と重要事項説明書は製本し、割印も押しましょう。
製本と割り印は必要?
法律などで義務付けられているわけではありませんが、製本しておくことを推奨します。
製本することでバラバラな書類が整理され、改ざんや偽造のリスクを軽減することが出来ます。
また、患者や家族にも安心感を与えることにつながりますね。
製本の仕方
簡単に契約書、重要事項説明書の製本の仕方について紹介します。
- ホッチキスで書類を留める
- 契約書の縦の長さより大きい製本テープを用意する
- テープの剥離紙を縦に半分だけ剥がして表裏均等になるように表に貼る
- 裏返して剝離紙の残り半分を剥がして、裏にも貼る
このような製本テープを用います↓
割り印
契約後には割り印を製本テープに重なるように押します。
署名欄に使用した印鑑と同じものを用い、署名した全員の印鑑を押しましょう。
まとめ
契約書と重要事項説明書は、居宅療養管理指導において不可欠な文書であり、利用者と提供事業所との信頼関係を築くために極めて重要な書類です。
契約書の説明時には、重要事項説明書との連携を強調し、利用者が全てを理解し、納得した上で署名・捺印することが大切です。
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