在宅訪問指導を行う際に指導料を算定する上で必須となっているのが薬学的管理指導計画 (以下、計画書) です。
この記事では計画書について解説します。
計画書がなぜ必要なのか、何を記載すれば良いのか、この記事を読んで頂ければ必要な項目を理解することが出来ます。
計画書のひな型 (Word形式) もダウンロード可能なので、ぜひ最後まで読んでください。
薬学的管理指導計画
まずは計画書がなぜ必要なのかを確認していきましょう。
在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定要件から見てみます。
薬学管理料(在宅患者訪問薬剤管理指導料)より一部抜粋
(5) 薬学的管理指導計画
ア 「薬学的管理指導計画」は、処方医から提供された診療状況を示す文書等に基づき、又は必要に応じ、処方医と相談するとともに、他の医療関係職種(歯科訪問診療を実施している保険医療機関の保険医である歯科医師等及び訪問看護ステーションの看護師等)との間で情報を共有しながら、患者の心身の特性及び処方薬剤を踏まえ策定されるものであり、薬剤の管理方法、薬剤特性(薬物動態、副作用、相互作用等)を確認した上、実施すべき指導の内容、患家への訪問回数、訪問間隔等を記載する。
イ 策定した薬学的管理指導計画書は、薬剤服用歴の記録等に添付する等の方法により保存する。
ウ 薬学的管理指導計画は、原則として、患家を訪問する前に策定する。
エ 訪問後、必要に応じ新たに得られた患者の情報を踏まえ計画の見直しを行う。
オ 薬学的管理指導計画は少なくとも1月に1回は見直しを行うほか、処方薬剤の変更があった場合及び他職種から情報提供を受けた場合にも適宜見直しを行う。在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医については、担当医に確認し、薬学的管理指導計画書等に当該医師の氏名と医療機関名を記載
このように在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するためには事前に計画書を作成しておく必要があります。
そして作成した計画書は共有しておくことが必要です。
関東信越厚生局集団指導資料より (一部抜粋)
(3)薬学的管理指導計画の策定と主治医への報告について
訪問指導前に「薬学的管理指導計画」の策定が義務付けられている。
薬学的管理指導計画は主治医や他の医療関係職種と共有しながら、患者の心身の特性や処方薬を踏まえ、薬剤の管理方法、処方薬の副作用、相互作用などを確認した上で、指導内容、訪問回数、訪問計画などを盛り込んで作成し、「この計画に従い実施します」と指示を出した主治医に報告し了解を得ておく必要がある。また、訪問した結果については指示をした主治医に文書で提供しなければならない。
このように計画書は作成するだけでは不十分であり、関係する職種へ共有しておくことが必要となっています。
さらに在宅協力薬局制度を利用している場合、協力関係にある薬局間での計画の内容の共有が必要となります。
計画書の記載内容
計画書の記載内容についてまとめます。
- 実施すべき指導の内容
- 患家への訪問回数・訪問間隔
- 疾患名 (推奨)
- 在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医
①②についてはこれまでの情報で必要とされているものになります。
このサイトでは③疾患名の記載についても強く推奨しています。
また、④については令和4年度調剤報酬改定で追加されています。
それぞれの項目について見ていきます。
実施すべき指導の内容
まずは「実施すべき指導の内容」です。
もちろん全ての患者に通り一辺倒な内容にするわけにはいきません。
次の患家への訪問回数・訪問間隔も同じですが、それぞれの患者に合わせて作成することが必要です。
そのためには医師からの訪問指示を受ける際に文書でもらっている情報があれば、それを参考にします。
訪問指示については必ずしも診療情報を含む形式でなくても良いので、もらえないこともあります。
訪問指示については以下の記事を参考にしてください。
ほかにも訪問看護師やケアマネジャーなど多職種で情報共有しながら作成します。
患者の心身の状態であったり、処方されている薬剤について、動態や副作用、相互作用などを考慮して、管理方法などを検討します。
このような情報は担当者会議に参加することで共有することが可能なので、機会があれば積極的に参加しましょう。
患家への訪問回数・訪問間隔
続いて患家への訪問回数と頻度になります。
訪問の頻度というと処方箋発行ごとと考えることが多いかもしれませんが、それ以外での訪問も認められています。
例えば、28日分の処方が出ているが服薬管理状況が悪く、週に1度薬剤師が訪問して服薬カレンダーでの服薬管理が必要な場合、7日ごとに訪問し指導料を算定することが可能です。
さらにこの訪問回数や訪問間隔は医師からの指示ではなく、薬剤師の判断で行うことが出来ます。
ただし、計画書には記載し、医師やケアマネジャーを含む関係職種に共有して、了承を得ておくことは必要です。
訪問予定日を記載しておくことで、処方が出た際に計画的な訪問か臨時(緊急)の訪問なのか判断することも出来ます。
疾患名の記載
疾患名を記載する理由は「在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1・2」を判断するためです。
詳細は以下の記事で記載しています。
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1・・・計画的な訪問薬剤管理指導に係る疾患の急変に伴うもの
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料2・・・1以外の場合。
上記のように対象疾患かどうかで点数が異なります。
そのため計画書には訪問指導に係る疾患名を記載しておくことで、計画外の日に臨時処方が出た際にどちらの点数を算定するのか迅速に判断することが出来ます。
このような理由から、このサイトでは計画書に疾患名を記載しておくことを強く推奨しています。
主治医と連携する他の保険医
令和4年度の診療報酬改訂において、主治医とは他の保険医の処方でも在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定できるようになりました。
ただし、その場合「主治医と連携している」ことが要件となり、事前に計画書に記載しておく必要があります。
在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医については、担当医に確認し、薬学的管理指導計画書等に当該医師の氏名と医療機関名を記載
ただし、緊急時については事前に確認できない場合もあります。
そのため、疑義解釈資料では訪問指導実施後に確認しても良いことになっています。
Q&A(R4年度調剤報酬改定)
問 36 「在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医については、担当医に確認し、薬学的管理指導計画書等に当該医師の氏名と医療機関名を記載すること」とあるが、担当医への確認は、在宅療養を担う保険医療機関の保険医と連携する他の保険医の求めにより、患家を訪問して必要な薬学的管理指導を行った後に行ってもよいか。
(答)よい。なお、この場合においては、薬学的管理指導の実施後に担当医への情報提供を行う際に確認を行うこと。
記載タイミング
- 患家を訪問する前に策定
- 少なくとも1月に1回は見直し
- 訪問後、必要に応じ計画の見直し
- 処方薬剤の変更があった場合
- 他職種から情報提供を受けた場合
大前提としては患家を訪問する前に策定します。
計画書なくして「在宅患者訪問薬剤管理指導料」や「居宅療養管理指導費」は算定できません。
その後は必要に応じて変更しますが、1月に1度は見直しを行うことが必須となります。
ほとんど場合は1月に1回以上訪問するので、訪問の都度見直すのが良いでしょう。
様式と記載例
様式については特に定めがありません。
「薬学的管理指導計画書」別に規定するものはないが、患者訪問する前に策定されているか(処方医の連携の上の訪問日、訪問回数の確認)
関東信越厚生局集団指導資料より
記載例
以下に記載例を示します。
様式ダウンロード
様式については以下からダウンロード可能です。
(使用にあたっては必ずご自身の判断でご使用ください。)
まとめ
今回の記事では在宅訪問指導を行う上で重要となる計画書について解説しました。
これがないと算定できないため、抜けがないように作成し共有しましょう。
以下にまとめ資料のせておきます。
ダウンロードして皆様の薬局でご活用ください。
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