退院時カンファレンスに呼ばれた!
その際に算定することになるのが退院時共同指導料ですね。
呼ばれたけど何を準備したらいいの?書類って必要なの?
この記事では退院時共同指導料について解説し、また退院時カンファレンスの意義やどのように行われるかを紹介します。
退院時カンファレンスの概要
なんのために行われるか
退院時カンファレンスは医療機関に入院中の患者が退院するにあたり、退院後の生活や治療についての方針を話し合うための会議です。
以下のような内容が話し合われます。
- 治療経過など患者情報を共有する
- 家族等の介護力の確認
- 退院後に関与する他の職種を確認する
- 退院後の生活の問題点を把握し、準備する
- 患者の自宅での希望を確認する
- 併用薬の確認
- 退院予定日の調整や、それに向けた準備
参加職種
また、参加職種は患者によって必要となる職種が変わってきます。
医師や看護師はもちろん参加しています。MSW、退院調整、理学療法士をはじめとするリハビリ職など。薬剤師の参加は極めて珍しい印象です。
報告によると病院側の参加者として医師・看護師・医療ソーシャルワーカーの参加率は70%以上と高いのですが、一方で薬剤師は低く5.5%程度とされています。
薬局の薬剤師の参加も少ないのですが、病院薬剤師の参加が少ないです。
個人的には病院薬剤師もカンファレンスに参加して頂き、連携していきたいです。
薬剤師が参加することの意義
薬剤師が思っている以上に薬の話は少ないです。
積極的に発言しなければ、患者が服用している薬剤を全て把握することが出来ないこともあります。
薬剤師が参加することで、服用している薬剤についてや薬歴を確認することで治療方針を検討することも出来ます。
また、薬剤師が参加することで終末期がん患者の退院支援に寄与することが出来ることも報告※されています。
※小林星太、大木孝弘ほか:保険薬局における終末期がん患者の退院前カンファレンス参加と情報把握に関する現状,日本薬剤師会雑誌2020:72:511-514
上記の報告では収集できる情報についても参加することで格段に多くなることも記載されています。
参加していない場合、服薬に影響する身体情報、薬剤管理能力、病名告知の有無、入院中の抗がん剤投与状況などを把握することは難しいケースが多く、参加することで薬剤師として患者の在宅療養生活を支えるために必要な情報を得ることが出来ます。
退院時共同指導料
概要(調剤報酬点数表)
退院時共同指導料・・・600点
注 保険医療機関に入院中の患者について、当該患者の退院後の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、当該患者の同意を得て、退院後の在宅での療養上必要な薬剤に関する説明及び指導を、入院中の保険医療機関の保険医又は保健師、助産師、看護師、准看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士若しくは社会福祉士と共同して行った上で、文書により情報提供した場合に、当該入院中1回に限り算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者については、当該入院中2回に限り算定できる。
補足(調剤報酬点数表に関する事項)
(1) 退院時共同指導料は、保険医療機関に入院中の患者について、当該患者の退院後の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、原則として当該患者が入院している保険医療機関(以下「入院保険医療機関」という。)に赴いて、患者の同意を得て、退院後の在宅での療養上必要な薬剤に関する説明及び指導を、入院保険医療機関の保険医又は看護師等、薬剤師、管理栄養師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士若しくは社会福祉士と共同して行った上で、文書により情報提供した場合に、当該入院中1回(別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者については2回)に限り算定できる。なお、ここでいう入院とは、医科点数表の第1章第2部通則5に定める入院期間が通算される入院のことをいう。
(2) 退院時共同指導料の共同指導は保険薬局の薬剤師が、ビデオ通話が可能な機器を用いて共同指導した場合でも算定可能である。
(3) (2)において、患者の個人情報を当該ビデオ通話の画面上で共有する際は、患者の同意を得ていること。また、保険医療機関の電子カルテなどを含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末においてカンファレンスを実施する場合には、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に対応していること。
(4) 退院時共同指導料は、患者の家族等、退院後に患者の看護を担当する者に対して指導を行った場合にも算定できる。
(5) 退院時共同指導料を算定する場合は、当該患者の薬剤服用歴等に、入院保険医療機関において当該患者に対して行った服薬指導等の要点を記載する。また、患者又はその家族等に提供した文書の写しを薬剤服用歴等に添付すること。
(7) 退院時共同指導料は、退院後在宅での療養を行う患者が算定の対象となり、他の保険医療機関、社会福祉施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設に入院若しくは入所する患者又は死亡退院した患者については、対象とはならない。
詳細については管理薬剤師.comさんの薬学管理料(退院時共同指導料)のページをご参照ください。
概要についての解説
保険医療機関に入院中の患者について、当該患者の退院後の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として当該患者が指定する保険薬局の保険薬剤師が、当該患者の同意を得て、退院後の在宅での療養上必要な薬剤に関する説明及び指導を、入院中の保険医療機関の保険医又は保健師、助産師、看護師、准看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士若しくは社会福祉士と共同して行った上で、文書により情報提供した場合に、当該入院中1回に限り算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者については、当該入院中2回に限り算定できる。
上記の下線部分について個別に解説していきます。
保険医療機関に入院中の患者
入院中の患者が対象です。
ときどき自宅で担当者会議を行われた際に算定できるのか?と質問を受けることがありますが、入院していない状態であれば算定は出来ません。
Q&A(H20年度診療報酬改定)でも以下のように解説しています。
Q:入院から在宅医療へ移行するにあたっては、病院(入院中)ではなく、退院直後に患家でカンファレンスを実施することもあるが、患家でカンファレンスを実施した場合にも退院時共同指導料は算定できるのか。
A:退院時共同指導料は入院中の患者について算定するものであり、患家で指導を実施した場合には算定できない。
退院後の訪問薬剤管理指導を担う保険薬局として参加
退院後は訪問薬剤管理指導を担うということなので、在宅医療となることを前提としています。
退院後に外来で来局される場合の患者様の場合では算定できません。
患者の同意を得て
患者の同意を得ることが必要となっています。
書面で残しておくことは義務付けられてはいません。
ただ、書面で残しておく方が後々のトラブルは避けられるでしょう。
退院後の在宅での療養上必要な薬剤に関する説明及び指導
参加するだけでは算定できません!
参加した上で、在宅での療養上必要な指薬学的指導を行う必要があります。
発言した要点なども薬歴等にまとめておきましょう。
入院中の保険医療機関の保険医又は保健師、助産師、看護師、准看護師、薬剤師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士若しくは社会福祉士と共同して
医科診療報酬の算定要件では「3職種以上」とされていますが、調剤報酬では職種の種類や人数には規定はありません。
地域によっては医師の参加が必須とされているところもあります。
ただし、参加した職種と氏名 (フルネーム) は記載する必要がありますので、レセプト摘要欄に記載しましょう。
必要事項を漏らさないように下記のような記録用紙を作成して持参すると良いです。
退院カンファレンス 記録用紙↓
文書により情報提供
ここが重要なポイントとなります。
文書による情報提供とありますが、カンファレンスに参加して初めて患者の情報を知ることとが多いので、事前に書類を準備することが難しいです。
したがって説明文書については後日作成して、お渡しすることが多いです。
患者説明文書↓
別に厚生労働大臣が定める疾病等の患者については、当該入院中2回に限り算定できる
一 末期の悪性腫瘍の患者(在宅がん医療総合診療料を算定している患者を除く)
二 ①であって、②又は③の状態である患者
- 在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅悪性腫瘍患者指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理、在宅肺高血圧症患者指導管理又は在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者
- ドレーンチューブ又は留置カテーテルを使用している状態
- 人工肛門又は人工膀胱を設置している状態
三 在宅での療養を行っている患者であって、高度な指導管理を必要とするもの
(上記「2.」の①に挙げる指導管理をいずれか2つ以上受けている状態のことを指す。)
上記のような要件を満たす場合は入院中に2回算定可能ですが、そのようなケースは非常に稀です。
私自身もこれまで数多くの退院時カンファレンスに参加してきましたが、2回行われたことは1度もありません。
補足の解説
(2) 退院時共同指導料の共同指導は保険薬局の薬剤師が、ビデオ通話が可能な機器を用いて共同指導した場合でも算定可能である。
コロナ禍を経て、オンラインでの退院時カンファレンスも増えました。
オンラインで参加することのメリットとして「時間が節約できる」点が大きいと考えます。
病院に行くまでの移動時間がなくなります。
一方で、デメリットとしては「直接患者さんの状態を見られないこと」や「ネットワークトラブル」、1つの端末で複数人参加している場合には「誰が発言しているか分からない」ことや「遠くて聞こえない」こともあります。
また、関係職種とカンファレンス前後でコミュニケーションを取ることも出来ないという点についてもデメリットだと感じています。
最近はリアルでの開催が戻ってきており、対面の良さを改めて実感しています。
(4) 退院時共同指導料は、患者の家族等、退院後に患者の看護を担当する者に対して指導を行った場合にも算定できる。
患者本人が退院時カンファレンスに参加できない・指導内容が理解できないような状態である場合等においては家族等に指導を行った場合でも算定可能です。
ただし、その際にも文書による情報提供は必須です。
(5) 退院時共同指導料を算定する場合は、当該患者の薬剤服用歴等に、入院保険医療機関において当該患者に対して行った服薬指導等の要点を記載する。また、患者又はその家族等に提供した文書の写しを薬剤服用歴等に添付すること。
薬歴への記載はもちろん必須です。
以下、記載例です。
【実施日時】XXXX年XX月XX日 〇〇:〇〇~〇〇:〇〇
【実施場所】●●病院▲階カンファレンスルーム
【参加者】本人、妻。●● (病院主治医)、●●(病棟看護師)、●●(MSW)、●●(在宅主治医)、●●(訪問看護師)、●●(ケアマネジャー)、●●(薬局薬剤師)
【発言・指導内容】現在服用している薬剤について確認。一包化しており、自己管理不可であるため、退院後は妻が薬剤管理を実施。退院後の服薬管理として日付印字と服薬カレンダーによる管理を提案した。
レセプト
摘要欄への記載
シ 退院時共同指導料を算定する場合は、指導日並びに共同して指導を行った保険医、看護師又は准看護師の氏名及び保険医療機関の名称を記載すること。なお、保険医等の氏名及び保険医療機関の名称については、算定対象となる患者が入院している保険医療機関とともに当該患者の退院後の在宅医療を担う保険医療機関についても記載するものであること。
地域によっては保険医等の「氏名」はフルネーム (姓+名) で記載する必要があるため参加する際には医師や看護師の名前はフルネームで確認してきましょう。
入院中の医療機関のみではなく、退院後の在宅医療を担う医療機関についても記載が必要です。
レセプト作成
レセプトは処方箋に基づく調剤分とは別に、それ単独のレセプトとして作成します。
外来服薬支援料1と同じような考え方です。
算定日
重要な項目です!
Q&A (H20年度診療報酬改定) より
Q:退院時共同指導料については、どの時点で算定するのか。
A:指導を実施した時点で算定する。
退院時カンファレンスに参加した日に算定します。
しかし、退院できなかった場合には算定出来ません。
従って、カンファレンスを実施した日と退院日で月をまたいでしまう場合、請求保留としておくことになります。
まとめ
今回の記事では退院時共同指導料にあわせてカンファレンスの実際についても紹介しました。
退院時カンファレンスに呼ばれた際にはこの記事を一通り読んでから参加することをおススメします。
まとめ資料を以下に掲載しておきます。
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